研究課題/領域番号 |
21K09286
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
藤井 亮爾 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 准教授 (10333535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / コラーゲン誘導関節炎 / SPACIA1 / CDK6 |
研究実績の概要 |
当研究室で同定した関節リウマチ滑膜細胞増殖に関わる新規因子SPACIA1の発現抑制がG1期細胞周期因子CDK6を介してTNFα誘導性滑膜線維芽細胞増殖を顕著に抑制することをすでに報告してきた。本年度はこのCDK6の阻害剤と臨床で実用されているTNF阻害剤の併用効果について、リウマチ動物モデルであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスを用いて検討した。マウスにCIAを誘導し、21日目の追加免疫後からCDK6阻害剤の混餌投与、または3日間隔でのTNF阻害剤(etanercept)腹腔内投与、及びそれらの併用について検討し、関節炎発症率および重症度を評価した。既報通り陰性対照と比較して、etanercept投与群では有意な重症度の低下が見られた。一方、最大効果量の半量のCDK6阻害剤では重症度の低下傾向は認められたが有意差はなかった(p =0.053)。両阻害剤の併用効果に関してもTNF阻害剤単独効果と比較して低下傾向は認められたが有意差は認められなかった(p =0.14)。今回の結果では、両剤の併用による統計的に有意な関節炎抑制は観察されなかったが抑制傾向は認められた。関節リウマチ治療でのTNF阻害剤との併用におけるCDK6阻害剤の可能性について、次年度以降さらなる条件検討により検証していきたい。またCDK4はCDK6と同じくサイクリンDと複合体を形成し、G1期細胞周期因子であるRbタンパク質をリン酸化制御する。そのためCDK6のみの阻害はCDK4の発現により無効化される可能性が予想されていた。この可能性について培養ヒト滑膜細胞を用いて検証したところ、CDK4の発現が認められるにも関わらず、CDK6阻害剤によりRbタンパク質のリン酸化が抑制された。つまり今回用いたCDK6阻害剤による滑膜細胞増殖抑制作用はCDK4発現によって無効化されないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で示したCDK6阻害剤の実験の他に、SPACIA1欠損マウス、CDK6欠損マウスといった遺伝子改変マウスを用いた検討を行う予定であったが、比較実験に必要な数のマウス産仔が得られず予定がやや遅れている。しかしながら飼養者によるマウスのハンドリングを見直したところ徐々に交配成功率が改善し、次年度では実験を実施できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
問題のあった遺伝子組み換えマウスの交配であったが、ハンドリングの見直しにより交配成功率を改善することができた。今後予定していた遺伝子改変マウスを用いた検討を実施予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子組換えマウスを用いた動物実験の遅れのため。ハンドリングの改善により十分なマウス産仔が得られるようになり次年度に実施予定。
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