研究課題
腰仙椎前外側椎体間固定術(Oblique Lateral Interbody Fusion for L5/S1: OLIF51)は、腰椎すべり症などの腰仙椎部変性疾患に対する低侵襲手術手技である。しかし、OLIF51は総腸骨静脈の損傷リスクがあり、致死的な出血を引き起こす可能性がある。本研究の目的は、OLIF51における総腸骨静脈の損傷リスクを低減するために、術中支援内視鏡による術野動画に対して深層学習を用いてリアルタイムで総腸骨静脈をセグメンテーションするモデルを開発し、その精度とリアルタイム性を評価することである。本研究では、千葉大学医学部附属病院整形外科教室から提供されたOLIF51術中補助内視鏡動画を用いた。データセットは4症例から抽出した画像を用いて構築し、セマンティックセグメンテーション用のU-Net、U-Net++アーキテクチャとResNet18、ResNet34のバックボーンを組み合わせた4種類のモデルを開発した。前処理としてRedチャンネルにガンマ補正を施し、評価指標にはDice係数を使用、リアルタイム性の検証としてフレーム毎の処理速度をフレーム/秒(fps)で評価した。主な研究成果として、U-Net++とResNet18を使用したモデルはDice係数0.65を記録し、リアルタイム性の評価では最速処理速度2.72fpsを記録した。また、ガンマ補正を適用することでセグメンテーション精度が平均Dice0.51から0.65に向上し、静脈の識別が容易になったことが確認された。今後の展望としては、モデルのパラメータ最適化やデータセットの再構築によりさらなる精度向上が期待される。特に連続フレームの映像が大きく変わらないことを利用し、推論するフレームを限定することでシステムの負荷を軽減しつつ、術者支援を維持する手法の探索が重要である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Int J Comput Assist Radiol Surg.
巻: 18 ページ: 45/54
10.1007/s11548-022-02783-0