研究課題/領域番号 |
21K09298
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 浩一 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60806793)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 破骨細胞 / 骨代謝 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
関節リウマチは炎症性疾患で、関節の骨破壊を伴う。近年の治療法の進歩にも関わらず、骨・関節破壊や骨粗鬆症性脆弱骨折が完全にコントロールされたとは言いがたい。関節リウマチにおける骨組織では破骨細胞と骨芽細胞の相互作用以外に、滑膜組織からの刺激により骨吸収が亢進している。本研究では炎症性関節炎の骨代謝においてKDM1Aの各細胞間での役割を包括的に解明し、関節リウマチの新たな治療法を探索することを目的とした。我々はKDM1aが、siRNAおよび阻害剤を使った実験で、破骨細胞分化に重要であることを発見した。RNA-seqを用いた解析でKDM1Aは破骨細胞分化において、炎症パスウェイ、低酸素パスウェイ、細胞周期パスウェイを制御することが予想された。さらにRA滑膜組織ではOA滑膜組織でKDM1Aの発現は亢進していた。マクロファージをTNF刺激するとKDM1Aの発現が亢進した。申請者は以前破骨細胞分化において、炎症パスウェイ、低酸素パスウェイ、細胞周期パスウェイいずれも、糖代謝に関連した、細胞代謝を制御することを示しており、KDM1Aは破骨細胞分化に必要なエネルギーを供給する際に重要な因子である可能性がある。関節リウマチなどの炎症下破骨細胞分化においては炎症性サイトカイン、多数の炎症細胞による酸素需要の増加より低酸素状態になり厳しい環境下で破骨細胞は分化する。この機序を利用することによりKDM1Aは炎症性関節炎における骨破壊の新たな標的となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.KDM1Aの破骨細胞分化における役割の同定 ヒトCD14陽性細胞に対して破骨細胞分化を誘導する過程で、siRNAにてノックダウンを行い、破骨細胞分化が抑制されることを確認した。これは複数配列のsiRNAをも用いても同様の結果であり、それにともない破骨細胞関連遺伝子の発現も抑制されていた。RNA-seqを行ったところ、KDM1Aは破骨細胞分化において、炎症パスウェイ、低酸素パスウェイ、細胞周期パスウェイを制御することがわかった。申請者は以前にて、炎症パスウェイ、低酸素パスウェイ、細胞周期パスウェイいずれも、細胞代謝を制御することを示しており、KDM1Aは細胞代謝において重要な因子である可能性がある。
2.KDM1Aの滑膜細胞における役割の同定 ヒトCD14陽性細胞より作成したマクロファージにTNFで刺激するとKDM1Aの発現亢進を認めた。この現象はIL-1β、IL-6では認めなかった。またRA滑膜組織ではOA滑膜組織に比して、KDMA1Aの発現亢進を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
1.KDM1Aの破骨細胞分化における役割の同定 RNA-seqを行ったところ、KDM1Aは破骨細胞分化において、炎症パスウェイ、低酸素パスウェイ、細胞周期パスウェイを制御することがわかった。申請者は以前にて、炎症パスウェイ、低酸素パスウェイ、細胞周期パスウェイいずれも、細胞代謝を制御することを示しており、破骨細胞分化における糖代謝などの解析を行う。また低酸素パスウェイは以前より関節リウマチ特異的な特徴であり、これを利用することで関節リウマチ特異的に骨代謝を調整する治療への可能性の検討を行う。 KDM1AはH3K4me1/2の脱メチル化による転写の抑制およびH3K9me1/2の脱メチル化による転写の活性化に関与する多機能分子である。KDM1Aがどのようなエピジェネティックな作用を介して破骨細胞分化に関与するか既存のデータベースやChip-seqを用いて解析をすすめる。 2.KDM1Aの滑膜細胞における役割の同定 ヒトCD14陽性細胞より作成したマクロファージにTNFで刺激するとKDM1Aの発現亢進を認めた。近年関節リウマチにおける病勢と滑膜組織に含まれる細胞との関係がscRNA-seqにより明らかにされている。KDM1Aの発現の亢進した細胞がどういった分画を構成するか公的データベースに預託されたデータを用いて解析を行う。
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