研究課題/領域番号 |
21K09300
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
四宮 陸雄 広島大学, 医系科学研究科(医), 寄附講座准教授 (80581454)
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研究分担者 |
酒井 宏水 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70318830)
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 講師 (10392490)
中佐 智幸 広島大学, 病院(医), 講師 (60467769)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 切断四肢灌流療法 |
研究実績の概要 |
体外灌流モデルの至適条件の検討に時間を費やした。雄のSDラットを麻酔下に全採血を行い、屠殺する。血液はヘパリンと混和の上、輸血用チューブのろ過網を通し凝血塊を除去する。血液を1000G 30分間、遠心分離して白血球・血小板層をマイクロピペットで可及的に除去する。血液を5%アルブミン付加した生理食塩水で希釈しヘマトクリット10%で50mlとなるよう調整する。ラットは左後肢を切断し大腿動脈に専用チューブを挿入,専用チャンバー内に置く。灌流回路は閉鎖回路とした。灌流速度は1ml/分とした。灌流液にヘパリン、ブドウ糖、インスリン、炭酸水素ナト リウムを定量で持続投与する。灌流回路は腎臓・肝臓に当たる排泄機能を有していない。自己血を用いた灌流液は赤血球 の溶血と制御困難なカリウムの増加を来たすため、12時間の灌流時間を3時間毎に区切り、同種血を用いた新しい灌流液に交換する。 新しい灌流液は他のラットから調達・作製する。静脈血は60分毎に血液ガス分析検査を行い、電解質、乳酸値、酸素化などを確認する。3時間毎に廃棄される灌流液から生化学検査(クレアチンキナーゼ)、浸透圧、溶血を確認する。副作用である浮腫の程度を評価すべく、灌流前後の下肢重量から増加比 (灌流後重量/灌流前重量-1)を計測した。組織学的評価として、前脛骨筋と腓腹筋内側頭から4 sampleを採取し、4%パラホルマリン で浸漬固定の上でパラフィン切片を作製し、過去の報告に従い、筋肉の虚血損傷の程度を評価する。以上の実験をSDラットを用いて、実験室室温環境のモデル(24-26度、室温群)と,ラットの体温に近づけるため38度設定の加温機で専用チャンバーを加温したモデル(33-35度、加温群)で行い、室温群の方が浮腫が有意に少なく、組織学的にも損傷が少ない傾向であった。以上の実験をLewisラットの雄のモデルで再度おこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットの赤血球を用いた体外灌流における溶血を防ぐ方法の模索に時間を要した。SDラットの体温群,室温群(体温よりも低い)の2群で比較すると、室温群の方が副作用の浮腫が少なく、組織学的に損傷が少な い傾向であった。また体温群の灌流液は溶血が多かった。ラットの血液にも血液 型があるが単純な混和のみでも溶血は来たすことがあったため、血液型不適合から交差反応による溶血の可能性を疑い、移植でも使用される Lewisラットに切り替えたため、時間を要した。Lewisラットで同様に室温群、体温群で実験を行い、室温群ではさらに浮腫を抑えた灌流が可能となった.これまでの結果により,室温(ラットの体温よりも低い)下での血液体外灌流プロトコールが作成できた.今後,同条件下での人工赤血球灌流療法との比較検討を予定よりは遅れているものの施行する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
無数に設定できうる灌流条件の中で、良好な条件を設定した。雄Lewis Ratの同種血を使用した、後肢の12時間体外灌流モデルで、体温群と室温群(ラット体温より低値)の2群の比較で一旦、論文作成を行う。無数に設定できうる灌流条件の中で、同プロトコールの室温群は良好な条件と考えられる。この室温モデルで、同種血、人工赤血球モデルの比較を行っていく。
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