研究課題/領域番号 |
21K09302
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
片岡 晶志 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (40301379)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アバロパラチド / ゾレドロン酸 / 骨癒合促進 / 骨粗鬆症 / ラット |
研究実績の概要 |
骨折治癒遷延は社会復帰の遅延を引き起こす.本研究ではアバロパラチドとゾレドロン酸の協調効果による骨折治癒促進効果について検討するために①軟X線撮影による骨癒合率の評価②協調作用の及ぼす骨代謝マーカーや骨標識によるリモデリング評価と非脱灰標本の検討およびマイクロCTによる骨形態計測②骨強度試験を行い力学的強度の検討③OVXモデルでも同様な実験を行い、骨粗鬆症下でも早期骨癒合が起こることを実証することを目標として挙げている. 【対象と方法】Sprague‐Dawley rat9週齢 雄40匹をコントロール群、アバロパラチド群(30μg/Kg, 皮下注、5日/週),ゾレドロン酸群(術直後にZA単回投与、0.1mg/kg、皮下注),アバロパラチド+ゾレドロン酸群の4群に振り分けた.右大腿骨骨切りモデル作成後8週で血清と両大腿骨を摘出し,大腿骨からは骨膜を採取し,RT-PCRにて骨形成・吸収遺伝子(Runx2,BMP2,RANKL)の発現量を評価した.さらに軟X線撮影,両大腿骨のマイクロCT撮影(SkyScan1176)、病理組織学的検査(非脱灰標本、Toluidin blue染色)を実施した.さらに3点曲げによる骨強度試験を実施した. 【結果】期待通りの結果であり、両者の協調効果により骨折治癒促進効果が明らかとなった。特にアバロパラチドのみでもかなりの骨折治癒促進効果が見られたが、ゾレドロン酸を投与することで、その効果は顕著となった(有意差あり) 【考察及び結論】両者の併用において,明らかな骨微細構造,骨癒合促進効果を認めることができた.骨折患者のみでなく、整形外科治療における計画的骨切り患者の早期社会復帰を可能にすると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初アバロパラチドの到着(米国の製薬会社から供与)が新型コロナ感染症のため遅れたがその後順調に進展した。残る実験はラット骨粗鬆症モデル(OVXモデル)での実験である(目標3)。これまでの実験は10週齢のラットを使用しており、骨のリモデリングは旺盛である。一方実臨床では高齢骨粗鬆症患者の骨折が多いのが現実であり、骨粗鬆症モデルでも確認が必要である。このためOVXモデルにおいても同様な実験をおこなうことは必須である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度一杯で実験は終了する。 アバロパラチドの骨折治癒促進効果は明らかとなった。しかしながらアバロパラチド単独での骨リモデリングの詳細が不明である。また他剤との併用時のリモデリングの状況において不明な点が多い。これを解決するために、独自の骨リモデリング制御機構の解明のための新規システムの開発をおこなう。これによって骨同化作用を持つ薬剤や,抗異化作用を持つ薬剤を検討し、2剤併用時のリモデリング制御をあきらかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの実験では結果は期待通りであり、アバロパラチドとゾレドロン酸の協調効果が十分認められ、骨癒合促進行効果があった。この方法を用いると実臨床で難治性骨折や遷延性骨癒合患者に応用が可能であり、臨床応用が期待できる。令和5年度末に残額が生じた理由は、アバロパラチドの米国からの到着がコロナ禍のため大幅に遅れたためである。 次年度はラット骨粗鬆症モデル(OVXモデル)での実験をおこなう(目標3)。これまでの実験は10週齢のラットを使用しており、骨のリモデリングは旺盛である。一方実臨床では高齢骨粗鬆症患者の骨折が多いのが現実であり、骨粗鬆症モデルでも確認が必要である。このためOVXモデルにおいても同様な実験をおこなう。使用計画としてはラットOVXモデルの作成(40匹)し、8週間飼育する。8週間後には骨粗鬆症モデルが完成する。これらを4群にわけ骨折モデルを作成する。ア:コントロール群 イ:アバロパラチド群(30μg/kg 週に5日皮下投与)ウ:ゾレドロン酸群(0.1mg/Kg, OVX翌日に1回のみ皮下投与)エ:アバロパラチド+ゾレドロン酸群。8週後大腿骨を摘出し評価する。これまでの実験と比較しスケールダウンしていること、実験内容に経験値が生かされることなどを考慮し全過程を10月までに終了可能である。その後実験結果の統合、検討をおこない論文の投稿の準備に入る予定である。
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