研究実績の概要 |
外傷性末梢神経障害、絞扼性神経障害に伴う重度末梢神経障害は、薬物療法に抵抗性を示し、効果を確実に期待できる外科的治療はわずかである。ラット末梢神経障害モデルに除圧術を行った後の疼痛閾値と末梢神経内でのT細胞サブセットの動態について検討した。Wistar rat 8週齢雄を用いて、末梢神経障害モデルはChronic Constriction Injury(CCI)を使用した。CCIのみを行ったcontrol群 (CON群)とCCI後3日目に再度坐骨神経を展開、癒着剥離後、結紮糸を切断除去したdecompression(DEC群)の2群を作成した。行動学的評価は、CCI術後3, 5, 7, 14日にvon Frey testを行い、疼痛閾値を測定した。(n=5) またフローサイトメトリーにてCCI後7, 14日にCD3陽性細胞の割合を測定した。さらにCCI術後 3, 5, 7, 14,日に坐骨神経からRNAを抽出、RT-PCRを行い、TNF-α, CD4, CD8の発現を検討した。CCI後3日で疼痛閾値は著しく低下したが、CCI後5-14日における疼痛閾値はCON群に比べDEC群で有意に高値であった。CON群ではCCI後7, 14日ともCD3陽性細胞の割合が有意に増加したが、DEC群では増加が抑制された。また、CCI群におけるCD8の発現上昇はDEC群で有意に抑制された。CD4の発現に有意な差は認めれなかった。CD8陽性細胞はシュワン細胞におけるTNF-α産生の増加や末梢神経障害に関与することが報告されている。本研究結果から、CD8陽性T細胞がTNF-α産生を介して末梢神経障害に関与している可能性が示唆された。
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