研究実績の概要 |
昨年度の研究成果からラット絞扼性末梢神経障害モデル(Chronic constriction injury ,CCI)の坐骨神経内にT細胞の動員が起こること、除圧することによりT細胞の減少と疼痛閾値の改善が起こることを明らかにしてきた。しかしながら、増加するT細胞の表現型とその役割は不明であった。本研究では、T細胞欠失マウスをもちいて絞扼性神経障害モデルにおけるT細胞の役割を検討した。T細胞欠損マウス(RAG2-KO)と野生型マウスの右坐骨神経を 9-0 nylon で 3 カ所結紮し CCI モデルを作成した。CCI作製 7, 14日後に坐骨神経を採取後、フローサイトメトリーを用いてCD3, CD4, CD8 陽性細胞の割合を検討した。また、リアルタイムPCRを用いてCCI作成3,5,7,14日後の坐骨神経におけるCD86,CD206,F4/80,IL-6,IL-17,TNF-αの発現を検討した。CCI後7.14日後において野生型マウスの坐骨神経におけるCD3+CD8+細胞の割合が上昇した。一方、RAG-2 KOマウスではCD3+細胞は認められなかった。RAG-2 KOマウスにおけるマクロファージマーカー F4/80, M2 マクロファージマーカーCD206の発現は野生型マウスに比べ有意に高かった。CD8陽性T細胞はSchwann 細胞における TNF-α産生の増加や末梢神経障害に関与することが報告されている。T細胞の欠失により、M2マクロファージが増加したことから、CD8 T細胞はマクロファージの極性化に関与している可能性が示唆された。M2 マクロファージは抗炎症サイトカインや成長因子産生を介して末梢神経の修復過程に関与することが報告されいている。CD8陽性T細胞は絞扼性神経障害における治療ターゲットになる可能性が示唆された。
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