研究実績の概要 |
遺伝子発現のON/OFFを制御する機構としてヒストン修飾が重要な役割を果たしておりH3K4(ヒストンH3の4番目のリジン残基)のトリメチル化(H3K4me3)は遺伝子発現を促進し、 H3K27のトリメチル化(H3K27me3)は遺伝子発現に抑制することが知られている。これまで申請者らは、ヒストン脱メチル 化酵素Jmjd3がこの行程を通じて破骨細胞の発生を制御していることを報告し、ヒストン修飾のChIP-seqによってTGF-β/Smad, Nedd9, PU.1などによる破骨細胞の分化制御機構を解明した。 本研究ではH3K4me3の脱メチル化により発現が抑制される遺伝子について解析し、ホメオボックスファミリーに属する転写抑制因子であるHematopoietically expressed homeobox(Hhex)を同定した。Hhexは骨組織で高発現しているが、骨における機能は不明である。Hhexは血液系細胞の分化の抑制に関わることが示唆されているが、骨髄由来マクロファージにおけるHhexの過剰発現は破骨細胞の分化を強力に抑制し、in vivoにおいて破骨細胞特異的にHhexを ノックアウトすると生理的条件下で骨量減少がみられることを突き止めた。Hhexは転写抑制因子として知られているが、マクロファージ・破骨細胞分化における標的 遺伝子はほとんど分かっていなかった。破骨細胞前駆体におけるサイクリン依存性キナーゼ阻害剤の発現がHhexによって負に調節されていることを見出し、Hhexの欠失は細胞周期のG1期の細胞の割合を上昇させることを発見した。ChIP-seq解析においてCdkn2aのヒストン修飾を調べた所、破骨細胞の分化過程でH3K4me3は変化せず、H3K27me3はモノバレントに変化することが明らかになった。
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