研究課題/領域番号 |
21K09324
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
カーン シャキル 大分大学, 医学部, 助教 (70746867)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二分脊椎 / 哺乳類モデル / プロサポシン / 神経成長因子 |
研究実績の概要 |
二分脊椎(SBA)症は運動、排尿障害、下肢の変形等が起こる重要な疾患である。現在までに適切な歩行障害モデル動物が無く充分な治療法が検討されていなかった。申請者らは脊髄再開裂手術により歩行異常を示すニワトリ二分脊椎モデルを世界で初めて開発し、その病態に関して複数の論文を発表してきた。本ニワトリ二分脊椎モデルは二足歩行するため齧歯類に比べヒトの運動障害により近い病態を呈する。我々の近年の成果により、神経栄養因子の一つであるプロサポシンに由来する18個の合成ペプチド(PS18)の単回投与による羊膜内治療が、SBAヒナの脊髄神経回路網の障害を防ぎ、出生後の感覚運動機能を劇的に改善することを明らかにした。しかし、ヒトへの臨床応用を目指すうえでは、ニワトリモデルだけではなく、哺乳類二分脊椎モデルを用いた検証も欠かすことができない。そこで、哺乳類のSBAモデルにおけるPS18の治療効果を評価するため、まずはラットとマウスを用いたSBAモデルの確立に取り組んだ。ラットおよびマウスにおいてSBAを発症させるために、ビタミンAの機能を媒介し胎児にSBAを発症すると考えられているレチノイン酸の投与量と投与時期(妊娠段階)を検討した。また、マウスにおいては神経管の奇形を含む先天性欠損症を引き起こすジカウイルスを用いることで、SBAモデルの確立に取り組んだ。いずれのSBAモデルについても条件の検討を進めることができたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、動物実験施設および実験室の利用が制限されたため予定通りに実験を進めることができなかった。レチノイン酸を用いた、あるいはジカウイルス感染により誘導した哺乳類のSBAモデルの確立は次年度に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行の影響により、動物実験施設および実験室の利用が制限されたため、予定通りに実験を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、前年度に検討した手法を用いて、レチノイン酸を用いたあるいはジカウイルス感染による哺乳類のSBAモデルの開発を進める。レチノイン酸を用いたSBAモデルには、妊娠メス親の子宮内での胚が8日~10日齢時にレチノイン酸を20~60 mg/kg投与する。なお、レチノイン酸はオリーブオイルに溶解し、妊娠メス親に経口投与する。ジカウイルスを用いたSBAモデルでは、野生型マウスにはアフリカ型の、トランスジェニックマウスにはアジア型のジカウイルスを用いる。妊娠メス親の胚が8日~10日齢時に各ジカウイルスを1x10^4 PFU投与する。これらの処理を施した胎児またはその後に産まれた新生子を対象として、組織学的および行動学的手法を用いてSBAモデルの確立の確認を行う。さらに、確立したSBAモデル動物にPS18を投与し、その後のモデル動物のSBAの症状を組織学的および行動学的手法を用いて確認し、哺乳類のSBAモデルに対するPS18の治療効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行の影響で動物実験や実験施設の利用が制限されたため、本年度は研究を遂行することが難しくそのため未使用金が発生した。2022年度は、来年度の実験計画に加え本年度実施不可能だった実験についても実施するつもりであり、そのため本年度の未使用金は、来年度の研究費として割り当てる予定である。
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