悪性骨軟部腫瘍の予後を規定する最大の因子は肺転移である。本年度は,悪性軟部腫瘍が原発巣から肺転移を来す際に、腫瘍の免疫プロファイルがどのように変化するかを、特に自然免疫系と獲得免疫系の療法明らかにした。このことは、悪性軟部腫瘍の肺転移に対する腫瘍免疫療法の確立、ひいては予後の改善に重要であると考えられた。
これまでの研究成果として,平滑筋肉腫(LMS)の肺転移では原発と比較してCD8+ T細胞の浸潤が著明に低下していることを確認している。LMSの肺転移でCD8+ T細胞の浸潤が減少するメカニズムを解明するため,原発と肺転移の組織標本を用いて遺伝子発現解析を行った.その結果、肺転移で発現が上昇しているDEGはC4BPA,CEACAM6,EPCAM,LAMP3,DMBT1,MUC1の6つであった.発現量と浸潤CD8+ T細胞数との相関解析の結果,最も相関が強いDEGはEPCAMであった(p=0.050).
さらに、LMS細胞株にてEPCAMの発現を阻害したところ、LMS細胞の培養上清により、CD8+ T細胞の遊走が惹起された。この結果よりLMSの肺転移では,原発と比較してEPCAMの発現が有意に上昇し、CD8+ T細胞の腫瘍への集積を阻害することで、EpCAMは免疫逃避に関与していると推定された。そのため、EPCAMの発現や機能を阻害する事でCD8+ T細胞の腫瘍浸潤が回復し,予後を改善する可能性がある。
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