研究課題/領域番号 |
21K09336
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
西尾 淳 福岡大学, 医学部, 講師 (90360304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脱分化型脂肪肉腫 / 異型脂肪腫様腫瘍 / 脱分化 / 粘液線維肉腫 / 染色体異常 |
研究実績の概要 |
脱分化型脂肪肉腫は中高齢者の四肢深部や後腹膜などの体幹深部に好発し、異型脂肪腫様腫瘍(分化型脂肪肉腫)と同様の高分化成分と高悪性度で脂肪への分化を示さない脱分化成分が隣接して存在する腫瘍である。脱分化型脂肪肉腫は手術以外に有効な治療法はなく、現在でも切除不能および局所再発例の予後はきわめて不良である。本研究の目的は、脱分化型脂肪肉腫の一部は良悪性の中間に分類される異型脂肪腫様腫瘍から発生することに注目し、どのようにして異型脂肪腫様腫瘍は脱分化型脂肪肉腫に変わるのか、そのメカニズムを解明することである。 脱分化型脂肪肉腫において染色体および分子細胞遺伝学的解析を行った。X染色体が巨大マーカー染色体の主要な構成成分の一つであることを明らかにした(Nishio et al. Biology and Management of Dedifferentiated Liposarcoma: State of the Art and Perspectives)。また、脱分化成分の一つである粘液線維肉腫において免疫組織染色でGLUT-1の発現を検討した。GLUT-1の発現が粘液線維肉腫で100%の陽性率を示し、GLUT-1の発現がほとんどみられない結節性筋膜炎との鑑別に有用であることが示唆された。さらに、FDG-PET/CTで肉腫のイメージングバイオマーカーとして期待される SUV(standardized uptake value)、MTV(metabolic tumor volume)やTLG(total lesion glycolysis)などの定量値を測定した。現在、得られたデータの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ対応などで研究施設への人の出入りや検体採取などが遅れている。また、脱分化型脂肪肉腫はまれな悪性軟部腫瘍で、本年度では新たに2名のみの試料提供となった。今後はコロナ対応をしつつ解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
早急にPDXモデルの樹立を行う。今後は研究計画通り、脱分化型脂肪肉腫細胞株(FU-DDLS-1)を用いて幹細胞様細胞の濃縮、その幹細胞性を確認し、細胞表面マーカーの同定を行う。また、次年度もGTG法を用いて染色体分析を行い、クローナルな染色体異常を同定する。構造的に極めて複雑な異常を示す場合には、SKY法を用いて総合的なカリオタイピングを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究本体および解析費に必要な経費を計上した。コロナのために学会発表などにかかる経費はなかった。余剰分に関しては次年度以降に繰り越しの上で、解析や研究成果投稿料などにかかる費用に使用する予定である。
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