研究実績の概要 |
脱分化型脂肪肉腫は中高齢者の四肢深部や後腹膜などの体幹深部に好発し、異型脂肪腫様腫瘍/分化型脂肪肉腫と同様の高分化成分と高悪性度で脂肪への分化を示さない脱分化成分(特に粘液線維肉腫/未分化肉腫)が隣接して存在する腫瘍である。脱分化型脂肪肉腫は手術以外に有効な治療法はなく、高頻度に転移を生じ、現在でも切除不能例、局所再発例、転移例の予後はきわめて不良である。本研究は脱分化型脂肪肉腫の発生から進展の各段階にかかわる遺伝子異常を同定することである。 まず脱分化成分でよくみられる粘液線維肉腫について、組織学的・免疫組織化学的検討および染色体分析を行った。粘液線維肉腫では複雑な核型異常を呈し、共通する構造異常は見出せなかった(Nishio et al. Diagnostics 13:3022, 2023)。GLUT-1の免疫組織化学染色では粘液線維肉腫で100%の陽性率を示し(Nakayama et al. Histology and Histopathology 38:47-51, 2023)、現在、脱分化型脂肪肉腫におけるGLUT-1の発現を検討中である。次に異型脂肪腫様腫瘍の分子細胞遺伝学的解析を行った。異型脂肪腫様腫瘍では、MDM2遺伝子を含む12番染色体長腕領域の増幅を伴った環状染色体が特徴的であることを明らかにした(Nishio et al. Anticancer Research 43:4295-4301, 2023)。 FDG-PET/CTを用いて肉腫のイメージングバイオマーカーとして期待されるSUV、MTV、TLGなどの定量値を測定し、得られたデータを解析した。現在、英語論文の作成中である。
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