研究課題/領域番号 |
21K09340
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
水谷 晃輔 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (80397356)
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研究分担者 |
藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
加藤 卓 朝日大学, 歯学部, 准教授 (50596202)
川上 恭司郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90589227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 癌免疫 / パーフォリン / リポソーム / 前立腺癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、癌免疫を利用した新規治療法の開発を目的とした。免疫担当細胞であるリンパ球は癌細胞を攻撃する際にパーフォリンとグランザイムを分泌し、前者により細胞膜に孔を開け、後者によりDNAを切断して癌細胞を死滅させる。本研究ではパーフォリンを癌治療に応用するためのデータ収集を行った。パーフォリン発現遺伝子を癌細胞に導入し、癌微小環境においてパーフォリンリッチとし免疫細胞の癌攻撃能力を増強させることとした。遺伝子導入療法では、有害事象低減の必要性から癌細胞特異的なドラッグデリバリー法が求められるため、モデルとして組織特異的なタンパクであるProstate Specific Antigen(PSA)を発現する前立腺癌を使用した。前立腺癌細胞特異的にパーフォリンを発現させるため、PSAプロモーターによりパーフォリンを発現するベクターを作成し、これをリポソームに内包しPSAを発現しているドセタキセル耐性前立腺癌細胞株(22Rv1DR)とPSAを発現していない前立腺癌細胞(PC-3)に添加したところ、22Rv1DRのみでパーフォリンの発現を確認できた。ついでパーフォリン発現がヒトリンパ球による癌細胞増殖抑制に及ぼす効果を調べるため、22Rv1DRとヒト末梢血単核球(PBMC)と共培養を行った。PBMCと癌(22Rv1DR)細胞の共培養では増殖抑制効果は認められなかったが、パーフォリン発現ベクター内包リポソームを添加すると強い細胞増殖抑制効果が認められ、パーフォリンリッチな癌微小環境が癌免疫に好ましい影響を及ぼすことが明らかになった。ついで22Rv1DRをマウスに皮下接種し、パーフォリン発現ベクター内包リポソームを経静脈投与したところ有意な増殖抑制効果が認められ、パーフォリン発現ベクター内包リポソームの全身投与における癌増殖抑制効果が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核心は癌微小環境でパーフォリン濃度を増加させ免疫担当細胞による癌細胞攻撃を増強させることにある。癌特異的に効果を発現せしむるためパーフォリンを免疫細胞ではなく癌細胞に発現させることとした。その実現のためパーフォリン発現をPSAプロモーターによって制御するベクターを作成し、計画どおりPSA発現前立腺癌細胞株のみでパーフォリンが発現することが確認できた。さらにそのベクターを体内に導入するための担体としてエクソソームを予定しているが、その前段階として当該ベクターをリポソームに内包したものを作成して実験を行ったところ、PSA発現前立腺癌細胞でのパーフォリン発現、ヒトPBMCとの共培養による癌細胞増殖抑制効果及びマウス生体内における同様の効果が確認できたため本研究は概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、エクソソームにパーフォリン発現ベクターを内包して治療に応用する道筋をつけることを目標としている。現段階ではリポソームに内包したベクターの評価は終了しているため、今後は当該ベクターをエクソソームに内包する方法を確立しこれまでの同様にヒトPBMCと癌細胞の共培養系とマウスモデルを用いて効果確認を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の所属施設移動のための手続きなどにより次年度使用額が生じた。共同研究者の移動は完了し研究を再開できる環境となったため予定通り本研究を継続する。
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