研究課題
R5年度の目的: 腎癌細胞株2種を対象試料として、GGCT阻害剤Pro-GA投与による細胞内グルタチオン(GSH)および活性酸素種(ROS)を測定する。N-アセチルシステイン(NAC)または外因性GSHによる救済効果を確認する。結果: Pro-GAを投与により濃度依存性の細胞増殖抑制効果を認めるとともに、細胞内GSHの減少とROSの増加を認めた。これにNACあるいは外因性GSHを添加することにより、細胞増殖は救済された。以上から、GGCT阻害による細胞傷害は細胞内GSHの減少からROS増加を経て細胞死に至るという機序が明らかとなった。研究期間全体を通じた成果: ①GGCT阻害によるγ-グルタミル回路構成酵素群(GGT1、GCLM、GCLC、GSS、OPLAH1)の発現挙動を調べたところ、GGT1は細胞種により結果が不定であったが、GCLM・GCLC・GSSは発現増加、OPLAHは発現低下を示した。 ②γグルタミル回路構成酵素群およびGGCTファミリータンパク質(CHAC1,CHAC2)の発現とGGCT阻害剤の感受性を比較検討したところ、mRNA発現の程度とPro-GAのIC50値との間には特に相関は見られず、GGCT関連酵素・CHAC1・CHAC2の発現程度はPro-GAの効果予測因子とはなり得なかった。 ③腎癌細胞株をもちいて、Pro-GA投与による細胞内GSHおよびROSを測定、およびNACまたは外因性GSHによる救済効果を確認したところ、GGCT阻害による細胞傷害は細胞内GSHの減少からROS増加を経て細胞死に至るという機序が明らかとなった。以上の研究結果から、GGCT阻害治療は細胞内のGSH産生を減じることに主たる作用を持つこと、一方、GGCT感受性をGGCT関連酵素群の多寡では予測できず、類縁酵素によるバイオマーカーを同定することが出来ないことが明らかとなった。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 11922
10.1038/s41598-023-39093-7
Organic & Biomolecular Chemistry
巻: 21 ページ: 5977~5984
10.1039/d3ob00655g
Expert Review of Anticancer Therapy
巻: 23 ページ: 461~469
10.1080/14737140.2023.2200170