研究実績の概要 |
2023年度は、ザイモグラフィーに変わるMMP-9定量キットを用い、活性型MMP-9と総MMP-9 (活性型+前駆型)を定量的に測定した。我々の予想と反し、再実験でも、Control群に比してRosuvastatin群でよりactive, total MMP-9濃度が上昇していた(有意差なし)。両群とも虚血操作によりtotal MMP-9濃度は上昇するも、両群間の有意差はなかった。active/total ratioはIRIに伴い両群ともに上昇しており、MMP-9がIRIにより活性化していることが示唆された。t=1,6ともに上記傾向は変わらないが、t=6の方がactive/total比は低く、時間とともに活性が低下している可能性が考えられた。 Cr値では、①非虚血のControl群、②非投薬下に30分虚血した群、③Rosvastatin内服の30分虚血群 で②が最も高値ではあるものの、3群間に統計学的有意差は認めなかった。 二光子顕微鏡ではControl群とAtrvastatin群で虚血後3時間までの好中球動態を観察し、Atrvastatin投与で糸球体への好中球集積が軽減される傾向にあることが示された。 スタチンは多面的作用を示す薬剤として知られており、そのうちの1つにMMP減少作用がある。スタチン内服によりControl群よりもRosuva群でactive, total MMP-9濃度は低下しているものと仮説を立てたが相反する結果となった。MMP-9の活性抑制についての報告はあるが発現自体や放出抑制については定かではない。実際、Cr値や好中球集積については予想した傾向が見受けられ、スタチンの多面的作用が複雑に絡み合い今回のような結果が生じた可能性が考えられた。 現在、この結果を踏まえ、他薬剤を用いた同様の実験に目下取り組んでいる。
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