本研究の目的は、上部尿路上皮癌の術後経過におけるctDNAの変異遺伝子量の変化が既存の画像学的検査よりも早期に再発や転移の検出が可能であるかを検証することである。 研究対象は上部尿路上皮癌の手術症例30例を予定していたが、45例登録しており、腫瘍組織、手術前後の血液、尿サンプル採取は終了している。 追跡する遺伝子変異の選択を目的とした腫瘍組織の遺伝子変異解析は39例で終了している。そのうち23例では各症例において追跡する遺伝子変異を選択し、術前後の血液、尿サンプルにおいてctDNAの解析が終了しており、手術前後のctDNA変化が確認された。23例のうち21例は術前のサンプルでctDNAの検出が可能であり、術後の低下を確認した。2例は術前化学療法を施行し、原発腫瘍の消失を認めた症例であったが、これらの症例では、術前のサンプルにおいてctDNAは検出されなかった。術後再発を認めた症例は11例で、膀胱再発が10例、転移再発が2例であり、1例は膀胱再発、転移再発を同時に認めた症例であった。膀胱再発症例全例で再発時に尿中ctDNAの上昇を認め、そのうち5例では、臨床的再発診断より早期に尿中ctDNAの上昇を認めており、リードタイムの平均は60日であった。さらに、尿中ctDNAにおける術前と術後2日目の変化率が術後再発のリスク因子であることが示唆された。 以上の結果から、血中・尿中ctDNAはバイオマーカーとしての妥当性があり、既存の画像検査よりも早期に再発の検出が可能である可能性があると考えられた。さらに、ctDNAは術後再発の予測も可能であることが示唆された。
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