研究課題/領域番号 |
21K09355
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松本 和将 北里大学, 医学部, 准教授 (70306603)
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研究分担者 |
岩村 正嗣 北里大学, 医学部, 教授 (20176564)
佐藤 雄一 北里大学, 医療系研究科, 研究員 (30178793)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / 蛋白解析 / 腫瘍マーカー / 尿路上皮癌 / 抗体 |
研究実績の概要 |
本研究は、現在までに同定した蛋白について、多数例の膀胱癌患者血清を用いて、早期診断、予後予見因子としての有用性を検討する。また、膀胱癌における様々な蛋白・抗体の発現、化学療法の治療効果に関与する可能性のある蛋白質の検出やその動態、そして新規蛋白質の発現と臨床病理学的所見・予後を比較検討し、臨床への応用を検討する。本年度結果について記載する。 膀胱癌細胞株を用いた二次元電気泳動で検出したAHNAK2について、膀胱全摘除術標本を用いて検討した。高発現群は、病期、リンパ節転移、リンパ脈管浸潤と有意な相関を認めた。また、低発現群と比較し、有意に無再発生存期間が短く、癌特異的死亡率が高かった。臨床病理学的因子を含めた予後に関する多変量解析でもAHNAK2高発現は独立した予後因子であった。バイオマーカーの可能性について見出した。 AHNAK2と同様に見出されたepiplakinについて検討した。血清を用いて、epiplakin発現を膀胱癌、尿路結石症、健常者で比較した。膀胱癌症例で、epiplakin発現は尿路結石症、健常者と比較し有意に高発現を血清中に認めた。一方、膀胱全摘除術標本での発現に関しては有用な差は見出されなかった。血清における診断マーカーの可能性が示唆された。 新規治療分子の可能性あるCD155についても膀胱全摘除術標本を用いて検討した。高発現群は、病期、異型度、リンパ節転移と有意な相関を認めた。また、低発現群と比較し、有意に無再発生存期間が短く、癌特異的死亡率が高かった。術後補助療法の施行に際してのバイオマーカーとして利用できる可能性を報告した。 臨床的な因子についても検討を行なった。ロボット支援膀胱全摘除術の周術期成績、体腔 内尿路変向術、筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法の治療成績についても報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規検出蛋白質について、膀胱癌組織、血液・尿検体を用いて反応性について解析を継続して行っている。本検討にて検出された数種類の蛋白質について、臨床病理学的所見と比較検討し、臨床的有用性を検討している。また、膀胱癌検出に有用な腫瘍マーカーを見出し、特許申請を行った。今後、本蛋白に関して機能解析およびキットを目指し検討を進めて行く。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、獲得済みの膀胱癌特異的抗体、自己抗体が認識する蛋白質に対して、収集済みの多数例膀胱癌患者血清・尿・腫瘍組織との反応性をスクリーニングし早期診断、予後予測マーカーの獲得を目指す。また、化学療法の治療効果との相関性を検討するため、シスプラチン耐性膀胱癌細胞株より見出した蛋白質を用いて検討する。さらに、非腫瘍性患者血清、健常人血清中の蛋白質との反応性から、有用な診断法(単独抗体または複数抗体を組み合わせた方法)をさらに検討する。獲得済みのプローブと多数例の患者血清・尿、臨床情報が揃っているので、研究期間終了時までにはさらに癌特異的マーカーを見出していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、検出した蛋白質について血清や病理検体を用い、免疫染色の検討に費やした。物品は消耗品を多く使用した。その結果、数種類の新規蛋白質を見出すことができた。次年度は、新規蛋白質に関して病理標本を用いた免疫染色や血清、尿検体を用いた蛋白質の動態についてさらに検討する予定である。また、新規蛋白質の同定は継続して行っていく予定でもある。具体的には、蛋白質合成、二次元電気泳動および免疫プロット・ドットプロットを用いた研究を実施予定としている。さらに、次年度は新規蛋白質の治療的意義を検討するため、動物実験を行う予定としている。以上検討を遂行するため、本年度残余分と次年度で計上した予算を使用予定である。
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