研究課題
膀胱癌の診断や経過観察は、画像診断および膀胱鏡により行われ、有用な腫瘍マーカーの臨床応用は実現されていない。我々はこれまでに、膀胱癌症例の組織や血清を用いて膀胱癌で特徴的に増減する蛋白質や自己抗体を検討し、膀胱癌特異的単クローン性抗体、膀胱癌患者血清中の自己抗体が認識する腫瘍関連蛋白質を同定してきた。本研究における目的は、各々の同定蛋白について多数例の膀胱癌組織や患者血清を用いて、早期血清診断、予後予見因子としての有用性を検討することである。研究期間内に膀胱癌関連蛋白質について臨床的意義について検討できたものを報告する。AHNAK2は膀胱癌組織を用いて、高発現する症例で、予後が不良であった。臨床病理学的因子と比較検討したところ、AHNAK2高発現は再発や癌死に関して、有意な予後予見因子であった。HEG1発現を認める膀胱癌症例では、病期が悪く、リンパ脈管浸潤も多く認められた。臨床病理学的因子と比較し、HEG1発現は、術後再発に関して有意な予見因子であった。血清中のepiplakinやDJ-1の発現は、健常者や良性尿路疾患症例と比較し、膀胱癌症例で有意に高値であった。一方、臨床病理学的因子を含め予後の検討を行った、両腫瘍ーマーカーは有意な因子とならず、血清epiplakinやDJ-1は、早期発見の腫瘍マーカーに有用と考えられた。抗がん剤の効果に関する検討も行った。PGK1発現を膀胱癌組織で認める症例では、シスプラチンを主として用いる化学療法に抵抗性を示し、治療の選択有用である可能性を示した。現在も、新規蛋白質の発現と膀胱癌の臨床病理学的因子との関連性を検討している。今後、さらに早期発見マーカーや治療関連因子を見出し、実臨床への応用を目指したい。
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Diagnostics
巻: 13 ページ: 3067
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Int J Mol Sci
巻: 24 ページ: 14536
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