研究課題/領域番号 |
21K09356
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久冨木原 良平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (40837027)
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研究分担者 |
大家 基嗣 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00213885)
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60445244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | lncRNA |
研究実績の概要 |
ヒトゲノムの大部分はタンパク質のアミノ酸一次配列情報をコードしないnon-coding RNAで構成されることが判明しており、その中で200塩基以上のものはlong non-coding RNA(lncRNA)と呼ばれている。種々の癌でlncRNAとの関連が報告されているが、まだ不十分な状況である。本研究では、分子標的治療・免疫チェックポイント阻害薬の先駆的な立場である腎癌とlncRNAの関連を調べることを目的とした。 核内のlncRNAは染色体構造や遺伝子の転写、スプライシングに関わり、細胞質内のlncRNAはmRNAの移動や安定に関与していることがわかっており、lncRNAの細胞内局在は機能解析において重要な情報であると考えられる。先行研究にて、HOTAIR、TUG1、CDKN2B-AS1の3種のlncRNAにおいて腎癌予後との関連を認めており、これらのlncRNAの細胞内局在を調べることで、lncRNAの機能解析を進めることとした。 まず計画1に則って、新規RNA detecting systemであるin situ hybridization chain reactionと、膨張顕微鏡法(Expansion microscopy)を併用することで、lncRNAの細胞内局在を調査した。薄切した腎癌組織にhydrogel polymerを浸透させたのち、probeを標的のRNAに標識させシグナルを増幅するチェインを連ならせ、最後に水につけることで、細胞骨格を保ったまま直線方向に2~3倍に膨張した組織の観察に成功した。これにより、回折限界を超えたナノスケールでの観察が可能となった。従来のhybridization chain reactionと比較しても、一つ一つのシグナルが離れることでその数を数えることができ、細胞内局在の定量的な発現評価が可能であった。 実際に10個の腎癌細胞においてHOTAIRのsignalを集計した。核外よりも有意に核内に多く発現しており(p=0.001)、核小体内外では明らかな発現の差は認めなかった(p=0.297)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規RNA detecting systemであるin situ hybridization chain reactionは先行研究にて施行可能であったが、膨張顕微鏡法(Expansion microscopy)との併用は難渋した。薄切の厚さを調節したり、スライドの種類を変更したりして、成功に至った。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究にて、腎癌予後との関連を認めたHOTAIR、TUG1、CDKN2B-AS1における腎癌組織内の局在を明らかにしていく。in situ hybridization chain reactionと膨張顕微鏡法の併用にて、定量的なlncRNA発現の局在評価を進める。 さらに計画2に基づいて、腎癌検体のDNA変異と、lncRNA発現についても調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
in situ hybridization chain reactionと膨張顕微鏡法の併用に難渋し、当該年度は腎癌組織をDNA解析に回すまでに至らなかったため次年度使用額が生じた。次年度は現在行っている定量的なlncRNA発現の局在評価を進めるとともに、計画2に基づいて、腎癌検体のDNA変異とlncRNA発現についても調査を進める。
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