研究課題/領域番号 |
21K09361
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
木全 貴久 関西医科大学, 医学部, 講師 (90593517)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 膀胱尿管逆流 / 尿路感染症 / プレバイオティクス / プロバイオティクス / 予防的少量抗菌薬投与 / 乳幼児 |
研究実績の概要 |
腸内細菌叢における有益菌の比率を増加させ、大腸菌などの尿路感染症(UTI)の起炎菌となる菌叢の比率を減じることがUTIの予防になるのではないかと考えた。そこで本研究では、プレバイオティクスを多く含む食材を摂取することで、有益菌の比率の高い腸内細菌叢に是正するUTIの新規予防法を確立することを目的とする。初年度として、成人ボランティアに食物繊維とレジスタントスターチを豊富に含む機能性大麦を摂取することで、腸内細菌叢変化があるかを明らかにすることを目的に検討を行った。 対象と方法:20歳から65歳の健康成人18名を対象として、プレバイオティクスとして機能性大麦を含むグラノーラ40g(機能性大麦含有量は20.4g、食物繊維5.6g、レジスタントスターチ0.68gを含有)を1日1回、週4回以上、4週間摂取させた。摂取開始前、摂取終了時、摂取終了1か月後に便を採取し、16S rRNA遺伝子解析を行い、多様性、腸内細菌叢構成菌目割合を比較した。 結果:対象18名(男性12人、66%)、年齢中央値は35.9歳 [四分位範囲: 33.8-41.6]であった。摂取前後で多様性、腸内細菌叢構成菌目割合に有意な差は認めなかった。酪酸産生菌に関しては、摂取前には中央値5.9% [2.4-6.8]であったのに対し、摂取終了時は8.2%[3.7-10.8]と、有意に上昇した(p=0.043)。しかし摂取終了1か月後には5.4% [2.3-9.0]と摂取前の水準に低下した。 考察:機能性大麦は一般の大麦と比較して2倍の食物繊維と4倍のレジスタントスターチを含む。Clostridium属に含まれる一部の酪酸産生菌は食物繊維を分解して酪酸を産生するため、機能性大麦がプレバイオティクスとして作用し、酪酸産生菌が増加したものと考えられた。以上からプレバイオティクスは、dysbiosisの是正に有用である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳幼児に対する、プレバイオティクス投与による腸内細菌叢の変化の調査に難しては、現在症例をリクルート中である。プレ実験にて、今回成人にプレバイオティクスとなる機能性大麦を投与したのちの腸内細菌叢の解析を初年度に行った。研究方法、研究計画において問題なく推進できるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今回、成人に対してプレバイオティクスとして機能性大麦を含むグラノーラを同一量摂取させ、腸内細菌叢の解析を行ったところ、腸内細菌叢の腸内細菌の組成を実質的に変化させることなく、有益菌を増加させる可能性が示唆された。今回のプレデータでは、大腸菌やクレブシエラが属する Enterobacteriales 目は、有意な低下はなかったが、低下する傾向はみられた。バーリーマックス摂取前後、摂取1か月後で差今後乳幼児にプレバイオティクスを摂取させる場合、離乳食の開始の有無や進行により腸内細菌叢の変化が起こる可能性があり、慎重な評価が必要となると思われる。また、プレバイオティクスの摂取内容・量の統一も困難であるため、注意深く検討していく。
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