研究課題/領域番号 |
21K09363
|
研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
田中 宏光 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (10263310)
|
研究分担者 |
藤田 和利 近畿大学, 医学部, 准教授 (50636181)
福原 慎一郎 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20609870)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | HASPIN / Aurora B / 精子形成 / ヒストンH3 / リン酸化 / 細胞周期 / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
HASPINは、細胞分裂で機能するセリン/スレオニンキナーゼである。私たちは、家族性大腸がんの疾患モデルマウスにおいて、HASPIN阻害剤が際立った副作用なくポリープの形成を抑えること明らかにした。ここでは、前立腺がん疾患モデルマウスを用い、HASPIN阻害剤の抗がん作用機序を分子レベルで理解することにより、Evidence-Based Medicineに則った副作用の少ない細胞の新しい分子ターゲットに作用するがん治療薬の確立を目指す。今までに複数のHASPIN阻害剤が同定され、それら阻害剤を用いて様々なヒト由来のがん細胞(大腸、乳、皮膚、膵臓、肺、卵巣、膀胱、胆、などのがん)に対する増殖抑制効果が報告された。最新の国外の研究グループにより、HASPIN阻害剤が前立腺がんに対しても抗がん効果が示された。最新の研究成果を踏まえ、本年度私たちは、複数のヒト前立腺がん細胞ラインを入手し、それらの細胞に対してHASPIN阻害剤のうちCHR-6494の前立腺がん細胞に対する効果の解析を進めている。また、天然有機化合物のクメストロールがHASPINの機能を阻害することが報告された。一方、私たちは天然のHASPIN阻害剤であるクメストロールを多く含むモヤシの栽培法を開発した。そこで、in vitroで各種前立腺がん細胞に対するクメストロールの効果を解析し、さらに、クメストロールを多く含むモヤシを前立腺がん疾患モデルマウスに経口投与し抗がん作用を観察する。低濃度でHASPIN阻害効果を示す合成低分子化合物のCHR-6494結果とクメストロールの結果をもとに、抗がん作用の分子メカニズムについての詳細な解析のための計画とその準備を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HASPINの機能阻害により、様々ながん細胞の増殖が抑制することが示されてきた。私たちは、家族性大腸癌に続いて、前立腺がんに関してもHASPINの機能阻害によって、その増殖が抑制されること示し、前立腺がんに関してもHASPINが抗がん作用のターゲットとなることを明らかにし、さらに天然のHASPIN阻害効果のある低分子有機化合物クメストロールでの効果を観察した後、臨床応用に結びつけるためにクメストロールの詳細な抗がん作用の分子メカニズムの解析を進める計画であった。最新の他のグループの報告で、前立腺がんに対してHASPINが抗がん作用のターゲットとなりうることが報告されたことから、本年は予定を変更し、クメストロールの各種ヒト前立腺がん細胞に増殖抑制効果の解析の準備を進めた。
|
今後の研究の推進方策 |
HASPIN阻害剤CHR-6494をin vitroで各種のヒト前立腺がん細胞に増殖抑制効果をしらべる。これまでの結果では、全て前立腺がん細胞に関して、増殖抑制効果があると考えられるが、効果が示される薬剤の濃度に関してちがいが表れる可能性について観察する。ことなった場合、ヒト前立腺がん細胞ラインの性質と感受性の関係について細胞レベルで解析を進める。一方、細胞レベルでのがん細胞増殖抑制効果の観察から、前立腺がん疾患モデルマウスに腹腔内投与すべき容量を決定し、in vivoでのがん抑制効果を観察する。また、天然のがん抑制低分子化合物であるクメストロールの前立腺がんに対する効果の観察を、私たちの今までの経験をもと進め、経口投与による効果の観察と並行して進める。これにより、比較対象が存在することから天然の化合物であるクメストロールの抗がん作用についての解析がより容易になるものと考えられる。高齢化社会の進行に伴って、前立腺がん患者の増加が進展している。前立腺がんの進展は、患者に意識されることがなく、発見時にはがんの進行レベルが高く、治療予後の治癒が困難であることが指摘されている。天然の低分子化合物であるクメストロールでの研究成果は、すぐにでも臨床応用に提案できるものであると期待している。
|