研究課題/領域番号 |
21K09373
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
雑賀 隆史 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10314676)
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研究分担者 |
酒井 大史 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00820804)
今井 祐記 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (10423873)
菊川 忠彦 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (70444734)
三浦 徳宣 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (80554427)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アンドロゲン / サルコペニア / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
骨格筋萎縮は特に高齢者において転倒のリスクを増加させるなどADL低下を招くことで二次性サルコペニアの原因となる。さらにフレイルへの進行で健康寿命を損なう。骨格筋萎縮を来すメカニズムは不明な点が多いが、男性においてはアンドロゲンの急激で持続的な低下や欠乏が強く関連することが考えられている。これまでのアンドロゲンによる骨格筋の制御に関しての研究から、全身性アンドロゲン受容体(AR)欠損マウスでは骨格筋の筋力および筋量低下を認めるが、骨格筋特異的にARをノックアウトしても、筋力は低下するものの筋量は低下しないことが明らかになっている。我々の独自の研究においても、骨格筋線維および筋幹細胞においてARをノックアウトしたマウスでは、骨格筋量の低下を認めないことを確認した。一方で、アンドロゲンを投与したマウスでは、著明な骨格筋量の増強を認めている。このことから、アンドロゲンが骨格筋以外の他の組織に作用した結果、血中を介した液性因子の作用により、骨格筋量の増強に寄与していると考えられた。また血液中に存在するタンパク質を網羅的に解析した結果、アンドロゲン投与により複数種類の肝臓由来タンパク質の血中濃度が顕著に上昇していることを見出した。 以上より、まずCre/loxPシステムを用いて、肝細胞特異的にARをノックアウトしたマウスを作出した。12週齢で安楽死させ、表現型を解析した。ウエスタンブロットや免疫染色で肝臓での蛋白レベルでのARの発現は確認出来なかったものの、mRNAを抽出しqPCRを行った結果、肝臓においてARが特異的にノックアウトされていることを確認した。表現型解析の結果、体重や四肢骨格筋重量には有意な変化は無く、さらに筋線維横断面積(cross sectional area, CSA)を測定することで、筋線維の萎縮もしくは肥大の定量的評価を試みたが、これにも有意な差は認め無かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓を介した骨格筋制御のメカニズを解明するため、初めに、Cre/loxPシステムを用いて、肝細胞特異的にARをノックアウトしたマウスを作出した。12週齢で安楽死させ肝臓からmRNAを抽出しqPCRを行ったところ、肝臓でのARのノックアウトは確認出来た。さらに肝臓のARに対する免疫染色、ウエスタンブロットを行ったが、肝臓でのARの蛋白レベルでの発現は確認出来なかった。また、体重や骨格筋重量、グリップテストを用いて評価した筋力には、コントロール群とノックアウト群で有意な差は認めなかった。ラミニンに対する免疫染色で下肢の骨格筋の筋線維横断面積(cross sectional area, CSA)を測定し筋線維の萎縮もしくは肥大の定量的評価を試みたが、これにも有意 な差は認め無かった。 以上から、骨格筋を間接的に制御する臓器として肝臓の可能性は低いと考えられた。元々、肝臓であると判断した実験系はメスのマウスを用いていたため、再度、オスのマウスを用いて精巣摘出、アンドロゲン投与を行い、これらのマウスの表現型や血清の解析が必要であると判断した。 当初、立案した実験計画通りに、肝臓による骨格筋を間接的に制御するメカニズムを想定し実験を進めてきた。結果として、肝臓以外の臓器を考慮する必要が出てきたが、従来通り、精巣摘出やアンドロゲン投与などによる骨格筋への影響、また血清中の液性因子の評価などを行う方針であり、実験としては概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アンドロゲンが、どこの臓器を介して骨格筋へ作用しているかを検索するため、オスの野生型マウスに対して精巣摘出とアンドロゲン投与を行う予定である。これらのマウスでの表現型の解析、また採取した血清を用いて質量分析により解析し、骨格筋量の変化に関わる液性因子を同定する。さらに骨格筋特異的にARをノックアウトしたマウスに対しても、同様に精巣摘出、アンドロゲン投与を行い、それに伴う骨格筋の変化が、骨格筋に発現しているAR依存的であるか検討する。 以上から同定された骨格筋肥大に関与する可能性の高い因子を同定できれば、血清やリコンビナント蛋白を筋芽細胞株に添加することで、筋肥大が誘導されるかin vitroで確認を行う予定である。さらにその因子の遺伝子発現転写調節のメカニズムを解明するため、ChIP-seqを行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響による学会発表が出来ず次年度使用額が発生した。次年度では学会発表経費として使用する予定である。
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