研究課題/領域番号 |
21K09374
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
神波 大己 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (20402836)
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研究分担者 |
馬場 理也 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 准教授 (10347304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 転座型腎細胞癌 / 多段階発癌機構 |
研究実績の概要 |
Xp11.2転座腎細胞癌は、転座によりX染色体上の転写因子TFE3 が融合遺伝子を形成し、恒常活性型の転写因子として機能することで生じる腎細胞癌である。我々は腎臓特異的融合TFE3(PRCCTFE3)発現マウスを作製することで、融合TFE3が腎細胞癌を発生させる事を世界に先駆けて明らかにした。一方で融合TFE3は、ヒト腎臓近位尿細管由来のHK2細胞やヒト胎児腎由来HEK293細胞に発現誘導させると細胞増殖を抑制する。個体においてがん遺伝子として働く融合TFE3が、どのようにこの細胞増殖抑制を乗り越えて発がんを惹き起こすのか、そのメカニズムは不明である。そこで本研究ではCRISPR/Cas9システムによるゲノムワイドスクリーニングを行い、融合TFE3による細胞増殖抑制の迂回に必要な遺伝子変化を同定する事で、Xp11.2転座腎細胞癌の発がん機構を解明する事を目標に研究を推進している。 令和3年度はCRISPR/Cas9を安定的に発現するPRCC-TFE3発現誘導可能なHEK293細胞及びHK2細胞の樹立に成功した。また、追加でEGFPも恒常発現させたHEK293細胞とHK2細胞を作成し、EGFPを標的としたgRNAを用いてKO効率を評価した。gRNAの形質導入後にFACSでEGFPの発現レベルを評価し、HEK293及びHK2ともに十分なKO効率が得られることを確認した。続いてHEK293細胞を用いたゲノムワイドスクリーニングを行い、DNA修復に関連した遺伝子や転写因子TFE3の標的遺伝子が細胞増殖を抑制する候補遺伝子として得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノムワイドスクリーニングの当研究室での樹立に成功した。HEK293細胞を用いたスクリーニングは終了しており、現在はHK2細胞についてスクリーニングを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
HEK293細胞とHK2細胞の2種類の細胞系を用いたゲノムワイドスクリーニング結果から融合TFE3による細胞増殖抑制の迂回に必要な候補遺伝子を推定する。その特徴から、融合TFE3 による細胞増殖抑制の回避に必要なシグナル経路や代謝経路を明らかにし、融合TFE3発現誘導細胞株や転座腎細胞癌患者由来細胞株、遺伝子改変マウスを用いて解析・検証する事で、転座腎細胞 癌の段階的な発がん分子機構を明らかにする。更に発がん分子機構に根差した転座腎細胞癌の新規治療法開発への展開を目指す。
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