研究実績の概要 |
ウイルスベクターによる遺伝子導入に依存せず、小分子化合物を用いた皮膚線維芽細胞からの膀胱尿路上皮細胞へのダイレクト・リプログラミングを目標として、小分子化合物による尿路上皮への分化誘導に反応して発光酵素を共発現する化合物スクリーニング用の細胞株の作成を試みた。尿路上皮細胞の細胞膜蛋白として発現するUroplakinプロモーターの配列を組み込んだ細胞株を作成できたが、尿路上皮誘導条件下でも発光酵素の共発現が得られず、スクリーニング用のレポーター細胞株として機能せず。 他の方法として皮膚線維芽細胞から直接尿路上皮細胞への誘導を試みるのではなく、小分子化合物を複数組み込んだ誘導培地を用いて皮膚線維芽細胞から内胚葉系前駆細胞への誘導を行い、内胚葉系前駆細胞から尿路上皮細胞への分化誘導を促す方法を試みた。マウス胎児線維芽細胞から内胚葉系前駆細胞への小分子化合物を用いた誘導は報告されていたが、ヒト皮膚線維芽細胞での内胚葉系前駆細胞への誘導・内胚葉系マーカー発現はqRT-PCRにて確認できなかった。 元々FOXA1, TP63, L-MYC, KLF4を導入することでヒト皮膚線維芽細胞から尿路上皮細胞へのダイレクト・リプログラミングが確認されており、4遺伝子中でヒストン修飾因子として作用しているFOXA1をHDAC阻害剤など複数を添加し代用することで導入遺伝子数を減らしていく形でのアプローチを試みた。FOXA1を除くTP63, L-MYC, KLF4に小分子化合物を複数加えて尿路上皮細胞への誘導を試み、マーカーの発現を確認したが、誘導培地での細胞死が多く、有効な試験結果が得られなかった。
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