研究課題/領域番号 |
21K09384
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
菊地 栄次 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (10286552)
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研究分担者 |
吉岡 祐亮 (吉岡祐亮) 東京医科大学, 医学部, 講師(特任) (60721503)
薄場 渉 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (90867649)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / エクソソーム / ExoScreen / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
近年、細胞から分泌される小胞体であるエクソソームは、細胞間の情報伝達手段として注目されている。特に不均一性癌細胞間での特異的な情報伝達機構として、癌の増殖、転移、再発、さらに診断や治療に関わるエクソソームの研究が進められており、臨床応用への期待が高い。本研究では、膀胱癌における尿中のCD55+9+exosomeをバイオマーカーとした低侵襲な体液診断法の開発と、CD55+9+exosomeの機能解析を目指している。 昨年度に膀胱癌診断マーカーとしての有用性が立証された尿中CD55+9+exosomeについて、さらに症例数を増やして検証を行った。膀胱癌患者109名と健常者42名、計151検体の尿からペレットダウン法にてエクソソームを抽出し、ExoScreen法にてCD9+exosomeおよびCD55+9+exosomeを測定した。その結果、CD9+exosomeならびにCD55+9+ exosomeは高い精度で膀胱癌患者を検出可能であった(AUC: 084, 0.80)。また、CD9+exosomeは尿細胞診陰性(class I, II)の膀胱癌患者のうち81%を陽性として検出可能であった。さらに組織学的所見との関連において、CD55+9+exosomeはinvasive、high grade、T2以上の膀胱癌患者の尿中で有意に上昇していた(p=0.0012, p=0.0184, p=0.0170)。 膀胱癌細胞株を用いた実験については、昨年度に明らかになったCD55の発現が最も高い/低い膀胱癌細胞株であるHT19765/UMUC3において、exosome depleted serumを用いて抗癌剤曝露後のエクソソームの定量を行い、結果を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・概要に示したように、本年度は尿中のCD55+9+exosome測定が膀胱癌の診断法として有用であることを検証し、さらにCD55+9+exosome発現量が悪性度と関連することを明らかにした。 ・膀胱癌細胞株の抗癌剤耐性獲得がエクソソーム分泌へ与える影響を検討するために、T24ならびにUMUCにcisplatinを長期暴露して、その耐性株を樹立した。 ・膀胱癌細胞機能とエクソソームの発現に関する研究を進めるための基礎検討により実験条件を設定した。 ・本年度も引き続き検証用コホートとして新規に膀胱癌患者の尿検体60例の収集を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
尿検体中のCD55+9+exosomeの測定を、症例数をさらに追加して行い、CD55+9+exosomeを用いた膀胱癌の迅速診断法の開発を進めていく。 また、膀胱癌細胞株を用いてCD55+9+exosomeの機能解析と抗癌剤による分泌への影響の検討をすすめる。さらに、CD55+9+exosomeの分泌を抑制するmiRNAの同定とその機能解析を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に使用予定であったExoScreen用試薬2セットのうち、1セットの納入が抗体の納期の都合で次年度の4月にずれこんだため。3月上旬に注文し、4月に納入となった。
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