研究課題/領域番号 |
21K09387
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
羽賀 宣博 福岡大学, 医学部, 教授 (50586617)
|
研究分担者 |
中村 信之 福岡大学, 医学部, 講師 (00389355)
松崎 洋吏 福岡大学, 医学部, 講師 (10758767)
松岡 弘文 福岡大学, 医学部, 非常勤講師 (50269007)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 前立腺肥大症 |
研究実績の概要 |
前立腺肥大症(BPH)の発症原因は明らかになっていないが、近年メタボリックシンドローム(Mets)との関連が示唆されている。Metsは体内に蓄積された脂肪の質(リポクオリティ)の低下を引き起こし、臓器の機能不全を来たす。脂肪の質の低下により、脂肪細胞は増大し、異所性の脂肪沈着を来たす。またMetsに伴う中心性肥満が、前立腺肥大症や下部尿路機能障害をきたすことも様々な疫学的研究で報告されている。今回の研究の目的は、脂肪の質の低下により、前立腺腫大(BPE)ならびに下部尿路症状(LUTS)への影響を明らかにすることとした。 当院で前立腺癌に対してロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)を施行した症例を対象とした。脂肪細胞の増大か前立腺組織内の異所性脂肪沈着を認める場合、脂肪の質の低下と定義した。RARPの際に摘出したRetzius腔内の脂肪細胞と非癌病変の前立腺組織内の異所性の脂肪細胞を顕微鏡下にて観察し、患者の状態、下部尿路症状と下部尿路機能との関係を検討した。 結果の一部を示す。前立腺組織内の異所性の脂肪細胞を認めた群において、統計学的に有意にRetzius腔の脂肪細胞の長径が増加(異所性脂肪細胞あり:なし=114.7±24.9mm:97.4±19.3mm、p=0.007)していた。また前立腺体積と脂肪細胞の長径において、統計学的に有意に正の相関を認めた (r=0.38 p=0.007)。また、異所性脂肪を認めた群においてIPSS蓄尿症状サブスコアが統計学的に有意に悪化(異所性脂肪細胞あり:なし=6.48±4.18:4.33±2.25、p=0.003)していた。脂肪の質の低下を伴う脂肪細胞の増大や異所性の脂肪沈着はBPEやLUTSを来たす可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂肪の炎症を示すマクロファージの評価等が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
マクロファージにはM1マクロファージとM2マクロファージがあるが、それらを形態的、機能的に解析を進めていく。さらに、動脈硬化,2 型糖尿病,虚血後の臓器障害に関与するとされる、トールライクレセプター4の発現を前立腺周囲の脂肪内や前立腺に発現するかを検討していく予定。
|
次年度使用額が生じた理由 |
検体採取に時間がとられていることと、脂肪細胞の標本作成が困難であり、研究が遅れている。したがって、研究備品の購入のための予算を取っておく必要がある。さらに、研究の成果が出た後の、研究発表のための学会参加費や、論文作成費、投稿費の予算を準備しておく必要があり、次年度使用額が生じた。
|