研究課題/領域番号 |
21K09401
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
蘆田 真吾 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (80380327)
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研究分担者 |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (50263976)
坂本 修士 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (80397546)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / アクネ菌 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、これまでにRNA-seq解析を行い、アクネ菌を前立腺癌の有力な病原体候補として同定した。そして、前立腺正常上皮細胞にアクネ菌を感染させマイクロアレイ解析を行ったところ、癌化に重要なpathwayに含まれる2種類の遺伝子(遺伝子A、B)の発現が低下することを発見した。本研究は、アクネ菌によるこれらの遺伝子発現低下のメカニズムについて研究を進め、前立腺癌発生の病態を解明し、予防に応用することを目的とする。前立腺癌発生におけるアクネ菌の役割が同定、解析されれば、病態解明につながるだけでなく除菌等により前立腺癌の予防に貢献できると考えられる。 まず、遺伝子A、Bの遺伝子発現低下機序の解明のため、アクネ菌の前立腺上皮細胞への感染様式の形態学的検討を行った。アクネ菌を前立腺上皮細胞に感染させ電子顕微鏡で観察したところ、アクネ菌は細胞内に侵入し、核周囲明庭に存在することが分かった。 次に、アクネ菌感染によるエピジェネティックな変化の有無を調べるためDNAメチル化解析(Methylation Specific PCR)を行ったが、プロモーター領域のメチル化は認めなかった。 そこで、次に、プロモーターアッセイを行った。アクネ菌が産生するタンパク質が遺伝子A、Bのプロモーターに作用し、その遺伝子発現を抑制するかどうかについて調べた。各遺伝子のプロモーター領域をPCRで増幅しベクターにクローニングしてレポーター・プラスミドを作製した。そして、レポーター・プラスミドをトランスフェクションした前立腺上皮細胞にアクネ菌を感染させ、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、遺伝子A、Bともにプロモーター活性の低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アクネ菌感染による遺伝子A、Bの遺伝子発現低下機序の解明のため、まず、アクネ菌を前立腺上皮細胞に感染させ電子顕微鏡で観察したところ、アクネ菌は細胞内に侵入し、核周囲明庭に存在することが分かった。そこで、遺伝子A、Bのレポーター・プラスミドをトランスフェクションした前立腺上皮細胞にアクネ菌を感染させ、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、遺伝子A、Bともにプロモーター活性の低下を認めた。つまり、アクネ菌が産生するタンパク質が遺伝子A、Bのプロモーターに作用し、その遺伝子発現を抑制する可能性が示唆された。 現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展しているが、当初の計画よりやや遅れている。その理由として、正常前立腺上皮細胞を用いていることやアクネ菌の活性が考えられる。正常細胞は増殖が遅く、継代できる回数にも限りがあるため、常に新しいものを使う必要がある。また、アクネ菌も古いものは活性が低下するため、常にフレッシュなものを使用しなければならない。そうなると必然的に時間と労力を要する。それに加えて、コロナ禍における実験試薬や器具等の納入の遅れも少なからず進捗に影響している。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子A、Bのプロモーター領域の欠失変異を作製し、アクネ菌由来タンパク質が作用し遺伝子発現を調節する部位を特定する。 特定した遺伝子プロモーター部位配列に結合するアクネ菌由来タンパク質をDNAプルダウンアッセイおよびLC-MS/MSにより同定する。まず、特定したプロモーター領域の遺伝子配列に相当するビオチン化DNAプローブを用いてアクネ菌由来タンパク質と複合体を形成させ、タンパク質-DNA複合体をサンプルから選択的に抽出し精製する(DNAプルダウンアッセイ)。そして、タンパク質をDNAから溶出させて質量分析による同定を行う(LC-MS/MS)。同定されたタンパク質は目的とする遺伝子のプロモーターに結合するアクネ菌由来タンパク質である。 アクネ菌の前立腺への感染が発癌に与える影響についてin vivoで検証する。C57BL/6Jマウスに経尿道的にカテーテルを挿入し膀胱および前立腺にアクネ菌を植菌する。植菌後2日、1週間、2週間、8週間目に安楽死させ前立腺および膀胱を摘出し病理組織学的検討としてHE染色および各種免疫組織化学染色を行う。以後は実験結果に応じて動物実験を計画し実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展しているが、当初の計画よりやや遅れている。そのため、本年度行う予定であった、遺伝子A、Bのプロモーター領域の欠失変異を作製し、アクネ菌由来タンパク質が作用し遺伝子発現を調節する部位を特定する実験を次年度に行うこととした。次年度使用額は、その実験に使用する予定である。
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