研究課題
申請者らは、これまでにRNA-seq解析を行い、アクネ菌を前立腺癌の有力な病原体候補として同定した。そして、前立腺正常上皮細胞にアクネ菌を感染させマイクロアレイを行ったところ、パスウェイ解析において相同組換え経路が有意に変動しており、そこに注目した。アクネ菌を前立腺上皮細胞に感染させ電子顕微鏡で観察したところ、アクネ菌は細胞内に侵入し、核周囲明庭に存在することが分かった。一方、γH2AX foci解析および相同組換えアッセイを行ったところ、アクネ菌を感染させた細胞において相同組換え修復欠損を認めた。さらに、申請者らは、相同組換え経路に含まれるBRCA2遺伝子発現がアクネ菌感染によって有意に低下することを証明した。次に、BRCA2遺伝子発現低下機序の解明のため、プロモーターアッセイを行った。BRCA2遺伝子のプロモーター領域をPCRで増幅しベクターにクローニングしてレポーター・プラスミドを作製した。そして、レポーター・プラスミドをトランスフェクションした前立腺上皮細胞にアクネ菌を感染させ、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、BRCA2遺伝子のプロモーター活性の低下を認めた。これらの結果は、アクネ菌感染は相同組換え修復欠損を引き起こし、BRCAnessからゲノム不安定性、さらには前立腺癌発生のリスクを増加させることを示唆している。前立腺癌発生におけるアクネ菌の役割がさらに明らかになれば、前立腺癌の病態解明につながるだけでなく、除菌等により前立腺癌の予防に貢献できると考えられる。
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The Prostate
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10.1002/pros.24723