研究課題
膀胱癌や上部尿路上皮癌においては臨床で有用な診断マーカーが少なく、患者は侵襲的で頻回の内視鏡検査を余儀なくされている。申請者らは過去のマイクロRNA(miRNA)研究から尿路上皮癌組織で発現が亢進しているmiRNAを尿中で検出することによる診断マーカーの開発を行ってきたが、これまでの前向き試験で有用な結果が得られなかったのは尿中の赤血球や白血球の混入が原因であることを突き止めた。予備的な実験によりこの問題はセルソーティング技術により、尿沈渣から剥離した癌細胞のみをセルソーターで選別してmiRNAを測定することで解決することが判明した。まずは有用なマーカーとなり得るmiRNAのスクリーニングを行った。既に保有している尿検体(尿路上皮癌患者:80検体、尿路結石:50検体、尿路感染症:45検体、健常者:30検体)を用いて候補miRNAの絞り込みを行った。候補miRNAの選別には過去に樹立した膀胱癌および上部尿路上皮癌患者の病理組織から得られたmiRNAプロファイルを作成できた。先ずは、このリストの中からmiR-99a-5pの過剰発現は増殖能、遊走能、浸潤能を抑制し、GEM耐性株においてGEM感受性が改善することが示された。miR-99a-5pの標的遺伝子として、RNAシーケンス解析からSMARCD1に着目した。ルシフェラーゼレポーターアッセイでは、miR-99a-5pがSMARCD1を直接制御することが示された。si-RNAを用いた機能喪失試験では増殖能、遊走能、浸潤能が抑制され、GEM感受性が回復した。miR-99a-5pの過剰発現やSMARCD1のノックダウンはin vivoにおいても増殖能を抑制した。さらに、βガラクトシダーゼ染色により、miR-99a-5pの誘導とSMARCD1の抑制が、p21の誘導を通じて細胞老化に寄与していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
初期段階のスクリーニングは終了しており、順調に進行している。
研究は大きく分けて以下の3段階のステップを経て行う推進する予定である。①既知検体を用いたスクリーニングによる候補miRNAの絞り込みと臨床病理学的事項との関連性の解析②肉眼的血尿患者を対象とした候補miRNAによる前向きな診断検査の実施とTURBT術後の再発予測マーカーとしての候補miRNAの有用性の検討③候補miRNAの癌遺伝子的作用についての機能解析
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Molecular Oncology
巻: 16 ページ: 1329-1346
10.1002/1878-0261