研究課題
膀胱癌や上部尿路上皮癌においては臨床で有用な診断マーカーが少なく、患者は侵襲的で頻回の内視鏡検査を余儀なくされている。申請者らは過去のマイクロRNA(miRNA)研究から尿路上皮癌組織で発現が亢進しているmiRNAを尿中で検出することによる診断マーカーの開発を行ってきたが、これまでの前向き試験で有用な結果が得られなかったのは尿中の赤血球や白血球の混入が原因であることを突き止めた。予備的な実験によりこの問題はセルソーティング技術により、尿沈渣から剥離した癌細胞のみをセルソーターで選別してmiRNAを測定することで解決することが判明した。まずは有用なマーカーとなり得るmiRNAのスクリーニングを行った。既に保有している尿検体(尿路上皮癌患者:80検体、尿路結石:50検体、尿路感染症:45検体、健常者:30検体)を用いて候補miRNAの絞り込みを行った。候補miRNAの選別には過去に樹立した膀胱癌および上部尿路上皮癌患者の病理組織から得られたmiRNAプロファイルを作成できた。上部尿路上皮癌のプロファイルではmiR-200aやmiR-191が有用なマーカーであることが予想され、がんと非がんをAUC 0.864の精度で鑑別することが可能であった。同時に現在、鹿児島県内の泌尿器科関連施設で収集を進めている「肉眼的血尿を主訴とする膀胱がん患者」のセルソーターによる検体処理を進め、RNAの抽出を行っている。
2: おおむね順調に進展している
既に候補マイクロRNAを同定して、臨床検体での測定に取り掛かっている。概ね順調である。
今後は候補miRNAについて以下の3段階のステップを経て行う予定である。①既知検体を用いたスクリーニングによる候補miRNAの絞り込みと臨床病理学的事項との関連性の解析②肉眼的血尿患者を対象とした候補miRNAによる前向きな診断検査の実施とTURBT術後の再発予測マーカーとしての候補miRNAの有用性の検討③候補miRNAの癌遺伝子的作用についての機能解析
すべて 2022
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Mol Oncol.
巻: 16 ページ: 1329-1346
10.1002/1878-0261.13192.