研究課題/領域番号 |
21K09406
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
内木 拓 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (50551272)
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研究分担者 |
河合 憲康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20254279)
内木 綾 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (20509236)
永井 隆 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (20813447)
惠谷 俊紀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (30600754)
飯田 啓太郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30713945)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
野崎 哲史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (50813432)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 細胞間連絡 |
研究実績の概要 |
近年、前立腺癌の罹患率は急激に上昇している。これまでの研究から前立腺癌は、特に高齢者に生じること、治療の第一選択であるホルモン療法(去勢術)を行っても、効果がなくなり(castration resistant prostate cancer:CRPC)、骨へと転移することが知られている。CRPCには、ドセタキセルに代表される抗癌剤の効果も限定的であり、新たな医薬品の開発が望まれている。近年、薬剤耐性機序として、アンドロゲン受容体(androgen receptor:AR)に関する基礎的研究成果が蓄積されてきた。中でもアンドロゲン結合部位を欠損させることにより、アンドロゲン遮断下でも活性化する、ARスプライシングバリアントの一つであるAR-V7が、CRPCの薬剤耐性に強く関与することが明らかになってきた。しかしCRPCの進展・転移メカニズムに関しては不明な点が多く、ヒトの病態をよく模倣したモデルも少ないという問題点がある。 私たちは今回、独自のCRPC転移モデルにおいて去勢抵抗性を獲得する前後でcDNAマイクロアレイを行った結果、CRPCにおいてこれまで文献上報告のない遺伝子connexin43(Cx43)の発現低下を、新たに発見した。connexinタンパクはギャップ結合の構成タンパクであり、マイクロRNAなどの低分子物質の交換により隣接の細胞と連絡する。この機構はgap junctional intercellular communication (GJIC)と呼ばれ、生体の恒常性の保持に重要な役割を演じる。そこで動物モデルによって免疫組織学的解析を行うと、CRPCは、Cx43の発現低下によるGJICによるコミュニケーション能低下を獲得していること、またin vitorの解析でCx43の発現を回復すると、CRPCの増殖能に変化が生じることが解明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in silico解析によってCx43の発現低下を認めた群の予後が不良であることを解明できた。またoverexpression系を構築し、実際の細胞増殖に関しても解析ができた。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルでの解析を加えて、臨床応用にむけたデータ収集に取りかかる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にヒト検体を用いた解析を行うことを計画している。具体的には、マイクロアレイを行い、マイクロRNA群と病理検体のデータから、細胞間コミュニケーションの低下を引き起こす、CRPCを発症する可能性の高い進展リスク因子を層別化する。そして、実際にホルモン療法を行う症例の血清サンプルと病理検体と年齢、血清PSA値、テストステロン値などの臨床パラメータと予後との関連を解析することで、CRPCの発症リスクを検証する。得られたマイクロRNAステータスに基づく臨床データベースを構築することで介入試験のデザインの基盤とする。
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