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2023 年度 実施状況報告書

カルシニューリン阻害薬の慢性腎毒性へ対するステロイドの有用性と新規マーカーの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K09414
研究機関北海道大学

研究代表者

田邉 起  北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (80880096)

研究分担者 村上 正晃  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (00250514)
篠原 信雄  北海道大学, 医学研究院, 教授 (90250422)
堀田 記世彦  北海道大学, 大学病院, 講師 (90443936)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード腎移植 / 薬剤腎毒性 / カルシニューリン阻害薬 / ステロイド / バイオマーカー
研究実績の概要

腎移植後に長期間使用するカルシニューリン阻害薬(CNI)による慢性腎毒性の特徴は腎細動脈の中膜平滑筋の硝子様変化による血管毒性であり、これにより腎の間質線維化や尿細管委縮が始まり移植腎機能低下を起こすと考えられていた。この動脈硝子化に代表される血管内皮細胞変化以外に、尿細管や間質の上皮細胞系に注目したマーカーが必要である。
近年CNIによる炎症性サイトカインの産生の誘導が指摘されており、慢性炎症のメカニズムのひとつであるNF-κB経路とSTAT3経路の活性化が相乗的に起こる炎症増幅回路の活性化が関与している可能性がある。一方で、免疫抑制剤の一つであるステロイドには抗炎症作用があり、CNIによる炎症性サイトカイン産生誘導を抑制している可能性がある。よって本研究の目的は尿細管間質においてCNI腎毒性をステロイドが軽減しているかを検索し、さらに新規バイオマーカーの開発に取り組むことである。
ステロイドがCNIによる腎毒性に良い影響を及ぼすかを臨床データおよび経時的な移植腎組織より解析した。当院の腎移植患者でステロイドが継続されている群と、ステロイドを早期に中止した群で、移植腎サンプルの見直しを行った。Periodic acid-Schiff stain(PAS)染色を用いて、これらの細動脈の硝子化を国際基準であるBanff分類のAlternate quantitative scoring for Hyaline Arteriolar Thickening(aahスコア)で3段階に分けて評価した。現段階でステロイド中止群においてCNI毒性が有意に高い結果がでている。この結果はステロイドが慢性腎毒性を抑制する可能性を示す重要な知見である。
今年度は臨床データからはどのような腎グラフトに毒性が出やすいかを検討した結果、50歳以上のドナーから提供された腎臓が10年以上経過すると毒性が出やすいことつきとめ論文として発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は、本研究の補助データとしてCNI毒性をドナー別に解析して毒性の出現頻度を解析し、高齢グラフトに毒性が多く出ることを論文として発表した。しかし炎症の根源である多量の炎症性因子の産生機構を炎症増幅回路(Inflammation Amplifier)の分子機構の転写因子STAT3とNF-κBの同時活性の解析が遅れている。
今後はこれらの炎症回路制御に関連する分子、STAT3やNF-κBなどで染色を行い、カルシニューリン阻害剤による腎毒性がステロイドで制御できているかを確認する予定で、典型例ではステロイドを中止したCNI毒性例において、STAT3やNF-κBの発現が増えている傾向がつかめている。
また腎生検サンプルを用いたRNA発現量の解析では、ステロイドを中止したCNI毒性例においてIL-6、TNFα、NF-κBの発現量が増えている傾向を確認できている。

今後の研究の推進方策

令和6年度はin vitroで集めた結果に追加実験を行い、臨床症例の経過をまとめて論文化する予定である。近位尿細管細胞において、タクロリムスの投与によりIL-6の発現量が増加するが、ステロイドにより発現量が抑制されること、そしてIL-6+TNFα刺激によるIL-6 Amplifierの活性化によりIL-6の発現量が増加することを確認する予定である。
最終目的は今回まとめた結果を、もう一度臨床検体にフィードバックすることであり、STAT3、NF-κB、および上記3のRNAシーケンスの検討で発見され得るCNI腎毒性のバイオマーカーの染色を行い、病理学的な定量評価を予定する。現存の細動脈の硝子様変化とは全く違う視点の尿細管や間質の上皮細胞系での評価が可能と考える。

次年度使用額が生じた理由

今後予定しているin vitroの追加実験やRNAシークエンス解析に用いる諸費用と、成果を国内外の学会で発表や論文化するための諸費用が必要である。
昨年度は予定した海外学会の発表に結果が間に合わず、本年度に発表予定、またミーティングの諸経費、追加実験の消耗品など購入予定があり、研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Kidney donor age of 50 years or above is a risk factor for calcineurin inhibitor‐induced nephrotoxicity2023

    • 著者名/発表者名
      Takada Yusuke、Tanabe Tatsu、Sasaki Hajime、Tsujimoto Takashi、Hotta Kiyohiko、Okada Kazufumi、Shiono Yutaka、Minami Keita、Tanaka Hiroshi、Harada Hiroshi
    • 雑誌名

      Clinical Transplantation

      巻: 38 ページ: e15196

    • DOI

      10.1111/ctr.15196

    • 査読あり
  • [学会発表] Chronic calcineurin inhibitors nephrotoxicity is an inflammation state, which can be suppressed by steroid treatment2023

    • 著者名/発表者名
      Naoya Iwahara, Kiyohiko Hotta, Yuki Tanaka, Ikuko Takahashi, Rie Hasebe, Hiromi Okada, Takahiro Tsuji, Yusuke Takada, Haruka Higuchi, Hajime Sasaki, Tatsu Tanabe, Nobuo Shinohara, Masaaki Murakami
    • 学会等名
      第110回日本泌尿器学会総会

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公開日: 2024-12-25  

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