研究課題/領域番号 |
21K09422
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
清水 龍太郎 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (60813665)
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研究分担者 |
久郷 裕之 鳥取大学, 医学部, 教授 (40225131)
武中 篤 鳥取大学, 医学部, 教授 (50368669)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / 染色体 |
研究実績の概要 |
我々は過去に、細胞株間での染色体の移動を可能にする、微小核細胞融合法(MMCT)と遺伝子プロファイリング解析によりpaired-like homeodomain 1を新規腫瘍抑制遺伝子として同定した実績がある(Qi DL. Mol Cell Biol. 2011.)。膀胱がんは、大まかにはluminal typeとbasal typeの2つの分子サブタイプがあり、それぞれ乳頭状腫瘍と結節状腫瘍を形成する傾向があり、治療反応性や予後が異なる。いずれのサブタイプも発生初期に認められる共通のイベントとして、高頻度なヒト9番染色体長腕(9q)のLOHが報告されている。このことより、9q上には膀胱がん発生過程に関与する重要な遺伝子(群)の存在が示唆されているが、9q領域に膀胱がんに関わる主要ながん遺伝子・がん抑制遺伝子は明らかにされていない。本研究においては、膀胱がん細胞株(SCaBER)にMMCTを用いて、マウスA9細胞から9qを導入したクローン(SCaBER#9q)を獲得した。ドナー細胞であるマウスA9細胞にヒト9qの全長が含まれることは染色体の各領域のSTSマーカーを使用し確認した。SCaBER#9に9qが導入されたことは薬剤選択マーカーであるpsv2neoをプローブDNAとして使用したFISH解析で確認した。また、コントロールとして4番染色体を導入したクローン(SCaBER#4)を獲得した。親株、SCaBER#4と比較して、SCaBER#9qで細胞の巨大化と扁平化を認めた。また、Proliferation assay、Wound healing assayにおいて、親株、SCaBER#4と比較して、増殖能、遊走能の低下が認められた。以上のことから9q上には膀胱がんにおいてがん形質に影響を与える遺伝子(群)が存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の骨子になる染色体導入法による外来遺伝子のがん細胞への導入は、細胞内の生理的に近い条件下(1コピーおよびオウンプロモーター下による発現制御)での遺伝子発現を解析することが可能となるが、1本の目的の染色体を導入した、クローンの獲得に時間を要したため、その後のgenotypeの変化などの解析途中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、獲得クローンにおいて、分子サブタイプに特異的な遺伝子発現動態解析を行う。luminal typeの特異的遺伝子マーカーであるFOXA1, GATA3, PPARG発現レベルの変化をqRT-PCR、Western blottingで解析する。また、外来因子によりがん形質を抑制したがん細胞株は長期的な培養により、しばしば再びがん形質を呈するリバータント細胞が出現する。このリバータント細胞を樹立することにより、効率的な責任遺伝子の同定が可能となる(Qi D.L. et al. Mol Cell Biol. 2011)。SCaBER#9を長期培養することにより、リバータントクローンの樹立を行い、RNA-seqによる分子サブタイプに影響を与える、9q上の候補抑制遺伝子選定を効率的に行えるよう工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
同様の研究内容での当研究施設での助成金を優先的に使用したため次年度使用額が生じた。今後RNA-seqなどの遺伝子解析を行う際やリバータントクローン獲得のための細胞培養費に使用する。
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