研究課題/領域番号 |
21K09432
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
宇佐美 雅之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30534755)
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研究分担者 |
田口 和己 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (00595184)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
岡田 淳志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (70444966)
濱本 周造 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (80551267)
茶谷 亮輔 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80881755)
河瀬 健吾 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (90881772)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 尿路結石症 / Nnt / 疾患関連遺伝子 / 腎結晶形成モデルマウス |
研究実績の概要 |
尿路結石は多因子疾患であり、遺伝因子に環境因子が作用して発症する。しかしその発症機序は不明であり、より詳細な解明が必要である。遺伝因子の研究には、近交系マウスが用いられることが多く、わずかな遺伝的差異が生じた亜系統が存在する。私たちは、亜系統マウスにおいて結石形成に差があることに着目し、Nnt遺伝子が結石形成を抑制していることを見出した。 【研究1】:腎由来細胞株を用い、蛍光標識したシュウ酸カルシウム一水和物(COM)結晶曝露による接着率とROS活性(酸化ストレス)を比較する。 【研究2】C57BL/6J(B6J)マウスはNntが欠失しているため、全長Nntを持ったB6Jトランスジェニックマウスを作製し、Nntの抗酸化作用による結石抑制効果を、マウスによる結石モデルを用いて比較検討する。 本研究は、上記2つの研究により、新たな尿路結石抑制遺伝子候補であるNntの機能を解析し、尿路結石の形成機序を明らかにし、予防法に応用することを目的とする。 2023年度の成果として、【研究1】において、①蛍光標識したCOM結晶暴露モデルについて、結晶の付着率を比較検討した。 ②また、培養液中のROS活性について比較評価した。 ③細胞株を用いた、Nnt遺伝子過剰発現系における検討について、タンパク質の発現確認および細胞株の違いによる条件比較検討を継続して行った。【研究2】については、④尿路結石抑制遺伝子候補であるNntについて、遺伝子全長のクローニングvectorのシークエンスによる配列確認およびクオリティチェックを行った。 ⑤Nntトランスジェニックマウス作成準備として、Nnt vectorを用いた遺伝子組み換えES細胞を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Nnt遺伝子による尿路結石症への影響を、培養細胞を用いた手法にて検討を予定している。ヒト腎由来細胞株であるHK-2およびマウス腎由来細胞株であるM-1に対し、蛍光標識したシュウ酸カルシウム一水和物(COM)結晶を37℃にて20分間暴露させる方法にて、結晶付着率および培養液中のROS活性を検討したが、ROS活性の定量について安定した結果が得られず、条件の再検討および調整に難渋した。また、ROS活性の測定法についても、予定した手法以外の再検討を必要とした。また、今回研究を実施している中で、Nntクローニングベクターによる遺伝子過剰発現系による検討を追加した。そのため、遺伝子クローニングおよび配列確認などのベクター作成を優先したため、進行が遅れている。Nntトランスジェニックマウスによる結石抑制機序の解明については、Nntクローニングベクターの作製には成功したものの、ES細胞への遺伝子改変の段階で、期待通りの遺伝子配列が得られず、継続して検討中である。また、社会的情勢にて実験材料を得ることが難しかった状況もあり、そのほかの研究も含めて、進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Nnt遺伝子の全長クローニングを行うことができており、このベクターを用いて、今後の研究を進めていく予定である。当初は、培養細胞に対してCOM結晶を暴露させるのみにて、結晶付着率および培養液中のROS活性を検討する予定であったが、ベクターを培養細胞にトランスフェクションすることにより、Nntが過剰に発現した状態での変化を亜系統間の状況を再現して検討することが可能と考え、実行する予定である。また、Nnt遺伝子をsiRNAにて発現抑制した系での検討も予定しており、より詳細なNntと尿路結石症との関連を検討することが可能と考える。Nntトランスジェニックマウスによる結石抑制機序の解明については、Nntクローニングベクターの作製には成功したものの、動物愛護の観点からES細胞への遺伝子改変などのin vitroでの研究を優先することとし、今後は専門業者に委託して行う方針とした。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな尿路結石抑制遺伝子候補であるNntの抗酸化作用を解析し、尿路結石の抑制機序の解明ならびに予防法に応用することを目的とした研究である。計画自体は順調な滑り出しであったが、COVID-19およびその後の情勢変化による通常医療業務の対応および負担増があり、また必要試薬の入手遅延などにて、予定していた研究を順調に進めることができなかった。また、コスト増大に伴い、可能なコスト削減として外部委託を行わない対応を模索したため、その時間を要した。このため次年度使用が生じた。Nntによる結石抑制効果の検討を加速させ、Nntトランスジェニックマウスによる結石抑制機序の解明につなげていきたい。
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