研究課題/領域番号 |
21K09433
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
内田 潤次 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40343412)
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研究分担者 |
鞍作 克之 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (70364007)
大年 太陽 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 助教 (40749214)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腎移植 / 慢性腎臓病 / 腎線維化 / HIF-PH阻害薬 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,腎移植後の予後を規定する腎線維化病態について,関連する低酸素シグナルを介する分子機序を明らかにすることを第一目的とし,得られた知見をもとに治療標的の提案を目指す。腎移植成績において短期的な移植腎生着率は飛躍的に改善した。しかしながら、現在も長期的な移植腎予後は改善したとは言えず、克服すべき課題として移植腎長期生着が挙げられる。様々な因子が移植腎にダメージを与えるが移植腎機能不全に至る過程で共通して認められる病態が腎線維化である。腎障害が進行する過程で腎組織が低酸素に陥り低酸素誘導性因子 Hypoxia inducible factor(HIF)が活性化され様々な遺伝子発現を誘導することが知られている。本研究ではHIFを持続活性化によって誘導される遺伝子群で腎線維化抑制に関わる分子を同定することを通して新しい腎線維化治療法の開発を目指す。令和4年度は、腎線維化モデルであるマウス片側尿管結紮モデル(UUOモデル)マウスを用いて、同時に導入したperiostin発現細胞が標識される動物モデル(periostin-Cre; Rosa26-LSL-tomatodtマウス)をベースに確立した線維化モデルを作製した。そして腎線維化形成の時系列変化とtomato蛍光標識を指標にperiostin発現細胞の数と発現領域の相関について解析することにより、periostin発現細胞を組織より採取する病態ポイントを決定した。また、腎組織から単一細胞をソーティングにて採取する条件も確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする細胞を標識した遺伝子改変動物の準備も完了し、組織から単一細胞を採取する条件も決定できた。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究によりperiostinは筋線維芽細胞に発現すること、またperiostinの欠失は腎線維化を軽減させることも報告されている。次年度は、前年度作製したperiostinマウスによるUUO線維化モデルを用いて、筋線維芽細胞に焦点を当てシングルセル解析を試みる。最終的にはUUOモデルにて腎線維化が起こる初期段階に関連する細胞、遺伝子の同定、またperiostin発現細胞がどのように関わるか、などの点を中心に解析を進める。また、同様のモデルを用いてHIFを持続活性化させるHIF-PH阻害薬投与による腎線維化に関連する細胞、遺伝子群の抽出を試みる。抽出された細胞・遺伝子から線維化形成の初期に関わるものを再抽出して、それらの線維化形成に関連する機能解析をin vitro実験あるいはin vivo実験として行うことにより、線維化形成のトリガーになり得る細胞・分子を同定しその機序を解明することを目指す。また、他の先行研究の結果や線維化に関連するデータベースより我々の得られる結果を検証する。総じて、本研究で抽出された候補分子群の実態を更に解明するため、機能獲得変異体や機能欠失変異体を作製し、それら分子群の機能を明らかにしていく予定である。また、候補分子解析結果から線維化形成に直結する機能分子が得られた場合は、臨床応用を見据え、当該分子の機能領域を確定し創薬につながる応用研究に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系の確立に計上した費用に対してスムーズに目標に達したため経費残額が生じた。生じた残金は次年度の分子解析に充てる予定である。
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