本研究の目的は、ヒト精子のミトコンドリアにおける酸素代謝を指標とした、新たな精子品質評価技術を確立する事。さらに、品質別にみた精子ミトコンドリアの形態的特徴を検討し、精子の品質管理を目的とした添加物の有用性を検証する事である。これまでの研究で解析プレートのコーティング基剤、および解析培地組成の最適化についての知見を得ることでヒト精子における、精子ミトコンドリアの細胞外フラックス測定系の構築に成功し、論文化した。(Taniguchi et al. BMC Research Notes 2022)実臨床における精子品質評価において、次に課題となったのが、精子を含む精液全体の環境であった。そこで、精液中にある一定量の白血球を含む「膿精液症」とそれ以外の精液中のマイクロバイオームについて新たな検討を行った。ナノポアシークエンシングを用いたマイクロバイオーム解析において、精液のマイクロバイオーム解析に適した手法の確立を行った。そして、Pilot studyの結果から、健常精液マイクロバイオームではStreptococcus属が多く存在し、膿精液症マイクロバイオームにおいてはStreptococcus属以外の菌が独自のマイクロバイオームを形成していることが示唆された。今後更なる症例数の検討から、膿精液症のマイクロバイオームの実態を明らかにしていきたい。
|