研究実績の概要 |
がん細胞薬剤抵抗性機序として抗癌剤が誘導する活性酸素(ROS)を抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)が抑制してapoptosisを阻害する機序がある。スルファサラジン(SAS)は、GSH産生阻害作用を持ち、非apoptosis性細胞死であるferroptosisを誘導する。卵巣明細胞癌細胞株においてSASとpaclitaxelの併用による細胞死誘導機構を検討した。 卵巣明細胞細胞株 (TOV21G, RMG-1, HAC-2, ES-2)にpaclitaxel、SASの単剤またはpaclitaxelとSASを併用効果をin vitroで検討を行った。HAC-2を除いたすべての細胞株でpaclitaxelとSASの併用投与はそれぞれの単剤投与と比較して細胞増殖能を抑制し、ROSの産生が増加し、apoptosis誘導を増強した。ES-2のみではpaclitaxelとSASの併用投与による細胞増殖抑制効果がferrostatin-1で解除された。HAC-2では他の細胞株に比較してシスタチオニンガンマリアーゼ(CGL)発現が上昇しており、ES-2では他の細胞株に比較してグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx4)の発現が低下していた。PaclitaxelとSASの併用投与によってそれぞれの単剤投与と比較して抗腫瘍効果の増強を認めた。 以上の結果から、明細胞癌細胞株ではCGLが高発現であるとSASの細胞死誘導効果が低下する。SASとpaclitaxelの併用投与で誘導される細胞死の主たる機序はapoptosisであるが、GPx4が低下しているとferroptosisも誘導されることが明らかとなった。
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