研究課題/領域番号 |
21K09441
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中田 恵美里 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (30447289)
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研究分担者 |
生水 真紀夫 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (30226302)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症 / ミネラルコルチコイド / ファルマコゲノミクス |
研究実績の概要 |
妊娠高血圧の発生には、胎盤における血管形成とその後のリモデリング(拡張)が重要である。妊娠中の血中ミネラルコルチコイドは5から10倍に増加して血液量を増加させ胎盤血流の維持及び血圧の正常化に関与すると考えられるが、この増加分のミネラルコルチコイドの産生経路は不明である。今回「胎盤由来のプロゲステロンが肝臓の薬物代謝酵素により21位水酸化を受けミネラルコルチコイドが合成される」という仮説をたて、肝酵素CYP2C19が多型により酵素活性に差異を示すことに着目し研究を計画した。 当科で分娩した妊婦151例を対象として、入院時の血液からDNAを抽出しCYP2C19及びアルドステロン合成酵素であるCYP11B2遺伝子多型を分析した。年齢・妊娠週数・経産回数・BMIなどをマッチさせた27症例で、アルドステロン合成経路中のホルモンであるプロゲステロン・デオキシコルチコステロン・アルドステロン濃度を質量分析法を用いて測定し解析した。その結果、妊娠高血圧腎症の妊婦では、CYP2C19の機能低下型アリルを持つ頻度が有意に高かった。また、CYP11B2 の機能低下型アリルを持つ頻度も高い傾向にあった。さらにCYP2C19機能低下型アリルを持つ妊婦では、デオキシコルチコステロン/プロゲステロン及びアルドステロン/デオキシコルチコステロン濃度が有意に低かった。 妊婦において、CYP2C19の機能低下アリルは妊娠高血圧腎症と関連していた。妊娠中に増加したミネラルコルチコイドが循環血漿量増加と胎盤血流維持により血圧制御に関与するが、妊娠高血圧症患者ではその制御が破綻している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時には、21位水酸化及びミネラルコルチコイド合成の場として胎児肝臓の酵素を一つの候補としていたが、母体肝臓での合成仮説でも同様の論理が成立するため、実際の研究は母体の多型解析により研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在、妊娠高血圧症候群の発症予測にsFLT-1/PlGF比が用いられている。しかしながらその陽性適中率は36.7%と低く、発症予測の点からは改善の余地が残されている。妊娠高血圧腎症の発症にはCYP2C19、CYP11B2遺伝子多型による妊娠中のアルドステロン合成系の変化が病態に関与している可能性が示唆されたことから、sFLT-1/PlGF比に遺伝的素因の情報を加えることで、妊娠高血圧症候群の発症予測の精度を向上させるとの仮説をたて、検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はCOVID19蔓延により現地開催の学会報告に出席する機会が得られず旅費が不要であった。 次年度は、学会参加の機会が多くなると予測されること、さらに関連施設も含めた前向きな症例登録を予定しており、検体収集及び処理に係る費用が増加する予定である。
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