研究課題/領域番号 |
21K09443
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樫山 智子 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (70755719)
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研究分担者 |
田口 歩 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60756782)
谷川 道洋 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70706944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 卵巣明細胞癌 / がん関連血栓症 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
子宮内膜症関連卵巣がんではトルソー症候群をはじめ血栓症を発症することが多い。内膜症関連卵巣がんの血栓症発生の実態を調査するとともに、その機序を明らかにすることを目的とした。R3年度には、子宮内膜症関連がんである明細胞癌における血栓症合併の実態と臨床的特徴について調査した。2009年から2019年に東京大学医学部附属病院において明細胞癌で手術を行った115人を対象に、血栓症の発症と臨床情報との関連を後方視的に検討した。80人はStage I/II期であり、35人がStage III/IV期であった。I/II期の患者のうち、10人(12.5%)で、III/IV期のうち、15人(42.9%)で血栓症の合併を認めた。予後解析の結果、血栓症を合併した群では、非合併群と比べて有意に5年生存率が悪かった。 以上の結果より、明細胞癌では、高頻度で血栓症を合併し、また血栓症の合併は予後不良因子となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に、血栓症を合併した卵巣がん症例をピックアップするとともに、その臨床像を把握することができた。次年度からは、in vitroの研究を行い、血栓症の分子メカニズムを検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
明細胞癌で血栓症を合併する理由について、明細胞癌の発癌機構である、酸化ストレスに注目して検討する。具体的には、「酸化ストレス」→「8-オクソグアニン(8-oxo-G)の蓄積及びDAMPsの放出によるインフラマソームの活性」→「好中球細胞外トラップ(NET)や組織因子(TF)産生の亢進」→「炎症カスケードの亢進」が起こっているかを検討する。 まず、酸化ストレスによる8-oxo-G蓄積やMTH1/OGG1活性化を評価する。子宮内膜症関連卵巣癌として、卵巣明細胞癌30症例と類内膜癌20症例、コントロールとして漿液癌30症例の腫瘍組織検体を用いて、8-oxo-Gと修復酵素であるMTH1/OGG1発現をPCRと免疫染色で評価する。次に、酸化ストレスにより蓄積する8-oxo-Gによる下流シグナルの評価として、卵巣がん細胞株を用いて、IL6/ PAI-1活性化を評価する。複数種類の明細胞癌細胞株、類内膜癌細胞株、漿液癌細胞株を用いて、血栓因子PAI-1発現をELISA法とRT-qPCRで解析し、基底状態の血栓素因を評価する。また、腫瘍内微小環境からのTNF-αやIL-6刺激に応じて明細胞癌細胞株の応答を確認するため、各種サイトカイン刺激下での炎症性サイトカインやPAI-1発現を確認する。また、明細胞癌や類内膜癌における細胞内経路の活性を検討するため、NF-κBやSTAT3経路に注目して活性化を評価するとともに、PAI-1産生に必要な細胞内パスウェイの解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度においては、複数種の卵巣腫瘍組織検体を用いた8-oxo-G、MTH1/OGG1の発現に関する解析をPCRと免疫染色で行う。また、8-oxo-Gの下流シグナルについて、卵巣がん細胞株のIL6/ PAI-1活性化を評価する。複数種の卵巣癌細胞株を用いて、血栓因子PAI-1や炎症性サイトカインの発現について、ELISA法とRT-qPCRで解析を行う。さらに、NF-κBやSTAT3経路の活性化についても評価を行う予定である。これらの解析に要する腫瘍組織検体、細胞株、PCR、免疫染色、western-blooting法等に係る費用として助成金を使用する。
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