研究課題/領域番号 |
21K09445
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 充宏 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (50377397)
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研究分担者 |
藤原 浩 金沢大学, 医学系, 教授 (30252456)
松本 多圭夫 金沢大学, 附属病院, 助教 (30748629)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子宮頸部異形成 / 子宮頸がん / FOXP4 / ELF3 / NOTCH3 |
研究実績の概要 |
これまで子宮頸部異形成の症例において免疫組織学的にFOXP4が発言しており進行に伴い発現が増強していることから、子宮頸部異形成の発症や進行癌への進展にFoxp4が関与している事が示唆された。 今年度はメカニズムを検索することを目的とした。子宮頸部異形成の細胞であるW12においてFOXP4を発現していることを確認した。この細胞をshRNAシステムを用いて発現をノックダウン(KD)することによる変化を検討した。KDにて細胞増殖が抑制された。また形態学的には細胞形態、組織学的に分化が促進された形態を呈していた。更に分化マーカーであるKRT10、IVLの発現が上昇していた。これらの知見からFOXP4は異型細胞の扁平上皮分化を抑制しながら、細胞増殖を促進することでCIN進行に寄与していることが示唆された。 次にW12の扁平上皮分化におけるFOXP4の下流遺伝子について検討した。FOXP4は転写抑制に作用するため、マイクロアレイ解析より、FOXP4のKDで発現が上昇する遺伝子に着目した。その結果、ケラチノサイト分化を調節するRIPK4シグナル経路やNotchシグナル経路に関連する遺伝子が上昇しており、FOXP4を介した分化調節に転写因子であるELF3やGRHL3、分化関連遺伝子であるNOTCH3について検討を行った。FOXP4KD細胞にsiELF3を導入し、ELF3をKDしたところ、脱分化様の細胞形態変化を認め、GRHL3、NOTCH3、IVL、TGM1、SPRR1の発現誘導は阻害された。またFOXP4KD細胞にsiNOTCH3を導入しNOTCH3をKDしたところ、脱分化様の細胞形態変化を認めHES2/5およびIVL発現の誘導が阻害された。以上より、FOXP4はELF3をDown regulationすることで、W12細胞の扁平上皮分化を抑制していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験がほぼ順調に遂行できたこととほぼ予想通りの結果が得られたことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) FOXP4を制御する上流の遺伝子の検索を行う。同定された遺伝子の発現を子宮頸部異型細胞や癌細胞にプラスミドベクターにて過剰発現もしくはshRNAなどでノックダウンして発現抑制させ増殖能やInvasion assayによる浸潤能や遊走能の変化を評価する、HPV感染およびIntegrationの変化についてはSouthern blot法、PCR法を用いて検討する。またこれらの細胞をOrganotypic raft cultures system (Laimins et al., Science, 1992) にて子宮頸部組織を構築し異形成や癌の変化を組織学的に評価する。 (2) FOXP4と子宮頸部異形成、頸がんの原因ウイルスであるHPVとの関連に注目し、子宮頸部でのHPV感染後にFoxp4の発現変化が引き起こされると仮定しOncogeneであるE6、E7とFOXP4とのInteractionについて検討を行い、治療戦略である因子を同定する。 (3) 1, 2で得られた因子及び昨年度、FOXP4が制御していることが確認されたELF3、NOTCH3及びFOXP4を含めた因子を制御できるアデノウイルスベクターを構築し異型細胞特異的に制御できる中和抗体やドラッグデリバリーシステムを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は実験計画が順調に進んだことにより実験回数が当初計画より少なく済んだため使用金額が計画より少なかった。合わせた助成金は先述した令和5年度の実験計画を確実に遂行し有意義な結果を出すために使用する予定である。
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