研究課題
妊娠高血圧症候群(HDP)の薬剤治療は確立しておらず、仮に新規薬剤を開発できても妊婦への影響を改めて検討し実用化するには莫大な時間と費用が必要である。これまで我々は、HDP発症機序である血管新生因子のアンバランスに着目し、そのバランスを回復するキーファクターであるPlGF(placental growth factor)を増加させる薬剤を探索してきた。しかし、PlGFは胎盤だけでなく母体血管内皮からも分泌されるが、その両方から分泌を促進する薬剤は見出されていない。そこで、本研究では日本での臨床使用経験も長い安全性の高い漢方薬ライブラリーを用い、in-vitro検討において胎盤・血管内皮両方からPlGF発現を促進する薬剤をスクリーニングし、その後in-vivoで検討を行うこととする。さらに、今回は効果のある漢方に共通する生薬を抽出することで、より効果の高い生薬の組み合わせを導き出すことを目的とする。妊娠高血圧症候群(HDP)の薬剤治療として、PlGF(placental growth factor)を増加させる薬剤をDrug repositioningの手法を用いて探索する。本研究では、漢方薬ライブラリーを用い、in-vitro検討において胎盤・血管内皮両方からPlGF発現を促進する薬剤をスクリーニングし、その後in-vivoで検討を行う。さらに今回は効果のある漢方に共通する生薬を抽出することで、より効果の高い生薬の組み合わせを導き出す。
2: おおむね順調に進展している
漢方薬ライブラリーを用い、in-vitro検討において胎盤・血管内皮両方からPlGF発現を促進する薬剤を見出し報告した[Yagi K, et al. Potency of Tokishakuyakusan in treating preeclampsia: Drug repositioning method by in vitro screening of the Kampo library. PLoS One. 2020] [八木 一暢ほか、妊娠高血圧腎症に対する当帰芍薬散の効果 産婦人科の実際2023年72巻3月号]。
マウスの妊娠高血圧症モデルを用いてin-vivoモデルにより検討する。交配後10.5日目に23Gの医療用チューブを用いて腹部大動脈と下大静脈を狭窄させる(NAV)ことで、血圧上昇・子宮内胎児発育不全などの症状を発現する。このモデルでは血中のsFlt1も上昇する。1.高血圧を認めはじめる交配後14.5日目に、新規候補薬投与群と溶媒のみの投与(コントロール)群に分けて、胎生15.5~18.5日に下記について検討する。①tail-cuff methodにより非観血的に血圧の測定②マウス血清中sFLT1、PlGFをELISA法による定量的検討③マウス尿中アルブミン、クレアチニンを測定し、アルブミン/クレアチニン比の検討④CFHについて現在論文投稿中の方法により評価⑤胎盤、母獣の腎臓および血管の組織学的検討⑥母獣の肝機能評価⑦妊娠の帰結について子宮内胎児死亡および子宮内胎児発育不全の評価上記検討により、母獣および新生仔の予後を解析し、動物モデルにおける薬剤の効果を検証する。また、至適投薬量や投与時期・期間についても、検討を行う。2.無処置のマウスにも前述の検討で得られた至適投薬量や投与時期・期間に投与し、母獣および新生仔の副作用の有無についても検討する。
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