研究課題
総肺静脈還流異常症(TAPVC)は出生後早期に治療が必要な重症先天性心疾患であるが、いまだ出生前診断率は低い。出生前診断のためには、肺静脈が左心房へ還流していることを確認する必要がある。しかし、肺静脈は非常に小さい構造物であるため、確実に検出するためには修練が必要である。そこで、深層学習を用いて肺静脈左心房還流像の自動評価を行う技術の構築を目指し本研究を進めている。これまでの検討から、妊娠中期の胎児超音波スクリーニング検査で取得した正常胎児画像を抽出し、心臓の各部位にアノテーションを行うことで、 肺静脈と左心房それぞれ単独で検知可能であった。次に、肺静脈が左心房に還流している断面を含む画像を抽出し、U-Net、Deep Residual U-Net (ResUNet)、UNet++、UNet3+の4手法を用いて肺静脈左心房還流像のセグメンテーションを行った。さらに検出精度を上げるために、画像の解析範囲を自動クロッピングで限定し、21倍にデータ拡張した後に、3分割交差検証を行ったところ、肺静脈左心房還流像をこれまで以上にしっかりと捉えることが可能であった。一方、TAPVC胎児ではいずれの手法を用いても、肺静脈左心房還流像をセグメンテーションすることはなかった。さらに、左心房後壁から下行大動脈までの距離をが増大している症例では、TAPVCの可能性が高いことより、同距離の自動計測を行う手法についても検討を行った。引き続きTAPVC症例の出生前診断率を向上させるために、研究を遂行してゆく。
2: おおむね順調に進展している
正常症例の解析は順調に進んでいる。
異常症例を集積し、異常症例に関しても更なる検討をおこなってゆく予定である。
画像解析に使用するコンピューターは2台予定していたが、現時点では1台で解析可能であるため、1台分のみ使用した。次年度解析の数が増加した場合は、追加でコンピュータを購入する必要が生じる。
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