研究課題/領域番号 |
21K09458
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
杉下 陽堂 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 准教授 (20587745)
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研究分担者 |
鈴木 直 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90246356)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 卵巣組織凍結法 / ガラス化凍結 |
研究実績の概要 |
CAYA世代がんサバイバーの妊孕性温存療法として卵巣組織凍結の実施例が増加している。卵巣組織凍結法として緩慢凍結法の他、卵巣組織凍結時における様々な凍結方法のプロトコールが提唱されているが、一長一短であり最適な凍結方法は未だ確立していない。本研究では卵巣組織ガラス化凍結法における新規的凍結方法を確立することを目指している。 2021年度の研究成果としては、以下となる。 1)加圧による組織内水分脱水への影響の確認と至適加圧値の立証。35%エチレングリコール(EG)の凍結保護剤を用い加圧し、卵巣組織の浸漬状況を卵巣組織凍結融解後、電子顕微鏡、ガスクロマトグラフィーにて確認することを計画している。現在、加圧をかけていない状況で実験を実施し、同様に評価を行い報告した。Sugishita Y, et al. Hum Reprod. 2022. PMID: 34928342, Quantification of residual cryoprotectants and cytotoxicity in thawed bovine ovarian tissues after slow freezing or vitrification. 本実験は高濃度ガラス化凍結液を用いた卵巣組織凍結において、凍結保護剤が組織内に十分浸漬していることが示され、凍結卵巣を融解することで凍結保護剤が拡散培養により濃度がゼロに近づくことを示すことができた。また組織障害レベルにおいては、既存の緩慢凍結法に遜色ない組織障害レベルであることを報告した。 2)Solid surface vitrification法を応用した凍結速度の効率化の立証。Solid surface vitrification法を応用し凍結速度の低下効率を改善させることを目標としている。現在、デバイス表面の凍結、融解速度について測定系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、多くの実験に関わる試薬、消耗品がコロナ感染症および東欧における危機的状況のために、数週間、数ヶ月の遅延を起こしている。そのため、実際にできるところを先に進めている状況となる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究について 1)加圧による組織内水分脱水への影響の確認と至適加圧値の立証。卵巣組織凍結時において、凍結保護剤の非加圧データは収集が終了している。今後加圧下における凍結保護剤の有用性について検討を開始する。 2)Solid surface vitrification法を応用した凍結速度の効率化の立証。卵巣組織凍結デバイスの凍結、融解速度計測は可能となったため、Solid surface vitrification法の実施デバイスの確立を目指す。 3)高周波を用いた卵巣融解方法の開発 卵子におけるウルトララピッドワーミングでは温度管理可能範囲は点状であり卵巣組織への使用は困難であった。高周波を用い、卵巣組織内部の水分を一度に均一に温度上昇させ、かつタンパク変性をきたさない範囲での温度管理を行う機械制御が必要となるが、高周波機器に卵巣組織を入れる条件下で組織内部の温度測定確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナ禍およびロシア近隣における危機的状況によって、実験における試薬、消耗品が手に入らない時期があり、商品の到着が遅延した。そのため、使い切れていない経費は次年度に持ち越し、実施したいと考えている。研究計画の変更については、今のところ物資の遅延のため、検討していない。
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