ヒト子宮内容液(uterine fluid: UF)中のsEVにおいて、着床期に増加するタンパクが胚着床に関与するかを検証した。まず、採卵日(排卵期UF群)および採卵日から5日後(着床期UF群)に採取したUFからサイズ排除クロマトグラフィー法で分離したsEVのプロテオーム解析を行った。排卵期UF群で2041個、着床期UF群で1386個のタンパクを同定し、このうち140個のタンパクが排卵期UF群と比べて着床期UF群で発現上昇していた。次に、子宮内膜癌細胞株(Ishikawa細胞)にホルモン処置を行って増殖期内膜(増殖期Ishikawa群)もしくは着床期内膜(着床期Ishikawa群)を模倣し、培養液から分離したsEVのプロテオーム解析を行った。増殖期Ishikawa群で913個、着床期Ishikawa群で915個のタンパクを同定し、このうち44個のタンパクが増殖期Ishikawa群と比べて着床期Ishikawa群で発現上昇していた。着床期UF群と着床期Ishikawa群の両方で発現上昇していたタンパクの中で、galectin-3に着目した。naive pluripotent stem cellから誘導したCT(nCT)をsyncytiotrophoblast(nST)へ誘導する際、galectin-3を誘導培地に添加するとnCTのcell fusionが亢進した。さらに、増殖期Ishikawa群または着床期Ishikawa群のsEVを誘導培地に添加したところ、増殖期Ishikawa群に比べて着床期Ishikawa群でnCTのcell fusionが亢進したことから、胚着床において、子宮内膜由来のsEVはCTのcell fusionを促進することが示唆された。
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