研究課題/領域番号 |
21K09469
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐治 史惠 大阪大学, 医学部附属病院, 技術職員 (40600987)
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研究分担者 |
瀧内 剛 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (40733358)
松井 崇浩 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (50747037)
木村 正 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90240845)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原始卵胞 / 微小残存病変 / 卵巣凍結 |
研究実績の概要 |
本研究では多光子励起イメージング技術により、卵巣の細胞とがん細胞を非侵襲的に区別化するための最適なイメージング条件を構築し、卵巣皮質内の微小残存病変(MRD)を検出することで、若年がん患者における唯一の妊孕性温存療法である卵巣凍結のMRD混入の危険性低下と卵巣組織の移植後血流障害軽減を目的とした原始卵胞部位得意的新規卵巣組織凍結法の構築を目的として行なっている。令和3年度はマウスの卵巣における原始卵胞、一次卵胞、二次卵胞および胞状卵胞等各発育段階の卵胞を多光子励起顕微鏡による観察で区別化することに成功した。しかしながらヒト卵巣においては励起レーザー波長の組み合わせの検討や、卵巣皮質部の菲薄化を試みたが、未だ原始卵胞を含むすべての卵胞の可視化には至っていない。 ヒト卵巣がん卵巣および正常卵巣における多光子励起顕微鏡による観察において、正常組織部位と卵巣がんの区別化のための観察データの収集を行なっている。卵巣がん卵巣においてコラーゲン組織の分解が見られ、正常卵巣と比較してコラーゲン組織観察所見に明らかな差が見られた。これらのデータを収集することで卵巣がんの診断への応用を目指す。 加えて、卵巣皮質内MRDの多光子励起顕微鏡による検出のため、白血病細胞卵巣転移モデルマウスの作成を目的として、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子をトランスフェクションにより組み込ませたヒトB細胞白血病細胞由来細胞株の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヒト卵巣における多光子励起顕微鏡を使用した最適な観察条件の構築を目的として、様々な励起波長を組み合わせた観察を行ったが、原始卵胞を始めとするすべての卵胞の可視化には至っていない。その原因として、卵巣組織において照射するレーザー波長の深達度が低いことが原因である考えられた。子宮頸部を使用した研究では0.5mm深部の自家発光を検出しているのに対して、卵巣では0.1から0.2mm深部の自家発光を検出するのみであった。約1mmの卵巣皮質をHE染色し、原始卵胞存在部位の表層部からの深度を確認すると約0.3から0.6mmであり、卵巣髄質側および皮質側どちらのサイドからの観察においても原始卵胞が存在すると考えられる深度にレーザー波長における観察深度が到達していないと考えられた。これらの問題点を克服するため、皮質を1mm以下の薄さ菲薄化して観察をおこなった結果、原始卵胞用の観察領域を認めたが、卵胞の特定には至っていない。 これらの理由によりヒト卵巣における原始卵胞の特定には至らず、遅延の原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
MRDの浸潤を可視化するため、NOD/SCIDマウスに作成したGFP発現ヒトB細胞白血病細胞由来細胞株を移植し、卵巣転移モデルマウスを作成する。まずは細胞株の投与量および投与経路の検討を行い、得られた卵巣転移モデルマウスより摘出した卵巣を多光子励起顕微鏡によりGFPの発現を確認することで、卵巣への転移および浸潤がん細胞の観察データを収集する。加えて、現行の組織病理学的評価をより詳細に評価、比較することで正確な診断の構築を目指す。 また、ヒト卵巣細胞において、原始卵胞の可視化および原始卵胞の特定を目的として多光子励起顕微鏡による観察において、組織の観察方向や観察深度の上昇を目指した最適条件の検索を引き続き行う。加えて、ヒト卵巣がん卵巣および正常卵巣の観察データの集積も引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナなどの影響により、参加学会がWeb開催となり、交通費の支出が抑えられたため、予定していた旅費が不要となった。 残高は令和4年度の助成金と合わせ、研究に必要な消耗品購入や学会参加費として使用する予定である。
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