研究課題/領域番号 |
21K09483
|
研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
鈴鹿 清美 千葉県がんセンター(研究所), 婦人科, 部長 (30334189)
|
研究分担者 |
丸 喜明 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (30742754)
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 部長 (30359632)
田中 尚武 千葉県がんセンター(研究所), 婦人科, 診療部長 (80236611)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 子宮体がん / 癌肉腫 / 患者由来がんモデル / 三次元培養 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
子宮体部癌肉腫の発症機構解明および治療戦略を構築する目的で、患者およびマウス由来オルガノイドを用いた研究を行った。患者由来オルガノイド(PDO)については、子宮体部癌肉腫の同一患者から以前樹立した3種類のPDO(組織片由来、ブラシ擦過由来、洗浄腹水由来)の多面的な解析を実施した。PDOの形状や形態学的特徴は類似していたが、PDO間で増殖能は異なっていた。この3種のPDOのゲノム解析を実施したところ、PDO間でERBB2遺伝子などにコピー数異常の多様性がみられた。また、免疫組織化学染色によるHER2蛋白の発現評価では元の腫瘍内で発現の不均一性がみられ、PDO間やPDO内でもERBB2のコピー数異常を反映して発現の不均一性が確認された。さらに抗がん剤やHER2阻害剤に対する感受性を評価したところ、PDO間で感受性が異なっており、患者の治療効果とも関連していることが示唆された。マウス由来オルガノイドを用いた研究では、子宮内膜正常オルガノイドにレンチウイルスを用いてKras変異にCdkn2a発現抑制あるいはTrp53欠失を組み合わせて導入後にヌードマウス皮下に接種することで高率に癌肉腫が誘導されることを見出した(Maru, et al, Oncogenesis, 2021)。皮下接種したオルガノイドは上皮細胞のみで構成されているため、上皮細胞が上皮間葉転換を起こし肉腫成分が発生していることが強く示唆された。また、樹立したハイブリッド型発がんモデルと同じ遺伝子異常を再現した遺伝子改変マウスを作出するため、泌尿生殖器上皮特異的に発現しているKsp1.3遺伝子を標的としたKsp1.3-CreマウスとKrasLSL-G12D/+;Trp53flox/floxマウスを交配し子宮角での腫瘍発生の有無を評価しようとしたが、予想に反して腎腫瘍を発症する傾向にあった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子宮体部癌肉腫の同一患者から以前樹立した3つのオルガノイドの多面的解析により腫瘍不均一性に関する洞察が得られたが、子宮体部癌肉腫の新規症例のオルガノイド培養の実施には至らなかった。Ksp1.3-Creマウスでは遺伝子組換えの臓器特異性が不十分であったため、より子宮に特異性の高いLtf-iCreを導入し、現在実験に必要な遺伝子改変マウスの作出に向けた準備を進めており、以後順調に実験が実施可能なことが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのオルガノイド研究は基本的に1症例あたり1患者由来オルガノイド(PDO)樹立となっている。今回、同一患者由来の複数PDOの解析を通してPDO間で多様性が存在することが明らかとなった。そこで新たに子宮体部癌肉腫症例を経験した場合は複数のPDO樹立を積極的に試み多面的解析に供する。また、樹立済みの3種の患者由来子宮体部癌肉腫オルガノイドを用いた網羅的化合物スクリーニングを実施し、治療薬候補を選抜する。一方で、マウス子宮内膜正常オルガノイドを用いたハイブリッド型発がんモデルを用いて、どのタイミングで肉腫成分が生じているかを明らかにするため、遺伝子改変したオルガノイドをヌードマウス皮下に接種し、複数時点で採取した皮下腫瘍およびその一部から樹立した腫瘍由来オルガノイドについて病理組織像などを確認する。さらにLtf-iCreとKrasLSL-G12D/+;Trp53flox/floxマウスを交配し、子宮角での腫瘍発生の有無を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に納品が間に合わなかったため、次年度繰り越しとした。
|