研究課題
卵巣明細胞癌(CCC)は酸素と長鎖脂肪酸の供給が不十分な虚血環境においてICAM-1タンパク質発現を誘導する。我々は、このICAM-1は虚血環境におけるCCC細胞のアポトーシス抑制、すなわち厳しい低酸素環境が原因となる細胞死への耐性獲得に重要であることを既に明らかにした。さらに、このICAM-1依存性アポトーシス耐性には表皮角層形成に関与する生理的アポトーシス過程に必要なフィラグリン(FLG)タンパク質のリン酸化が重要な役割を担うことをリン酸化ペプチドの網羅的質量分析により既に明らかにしている。当該年度はFLGのCCC細胞アポトーシス抑制機構解明のため、虚血環境におけるCCC細胞の生存能へのFLGの効果の検討とshort hairpin RNA 発現によるFLGノックダウンCCC細胞株の樹立を検討中である。虚血性環境においてICAM-1が発現誘導されるCCC細胞であるOVISE, TOV21Gを用いてRNA干渉法によるFLG発現抑制の細胞生存能への効果を検討したところ、低酸素、無血清培養下、FLGノックダウンによりこれらの細胞の生存能は統計学的に有意に減弱した。一方、ICAM-1発現が誘導されない環境である正常酸素、無血清培養下ではFLG発現抑制の効果は見られなかった。このことより虚血性環境におけるICAM-1-FLG経路が細胞の生存能増強に重要であることが示唆された。また、レンチウイルスベクターを用いてFLG発現をshRNA発現により減弱させた細胞株とそのコントロール細胞株を樹立中である。現在コントロール、FLGノックダウンについて複数の細胞クローンを単離、増殖させ、ウェスタンブロットによりFLG発現を検討中である。
3: やや遅れている
研究計画書に記載のアポトーシス抑制機構の実験にまで至っていないため。
研究計画書通りに遂行予定である。
研究の進行状況が予定よりやや遅れているため。
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Br J Cancer
巻: ー ページ: ー
10.1038/s41416-022-01808-4
Cancer Sci
10.1111/cas.15324
巻: 112 ページ: 4679-4691
10.1111/cas.15106