表皮におけるバリア機能を担う角質層の形成には顆粒層細胞のアポトーシスに伴うプロフィラグリンの脱リン酸化に続くフィラグリンモノマーの生成が重要であることが知られている。本研究は酸素や他の血清成分の供給が不足した虚血性環境に暴露された卵巣明細胞癌細胞がICAM-1依存的にアポトーシス抑制機構を獲得する際のフィラグリンの効果について検証することが目的である。最終年度は、レンチウイルスベクター系を使用してRNA干渉法により作成したフィラグリンをノックダウンさせた卵巣明細胞癌の細胞およびそのコントロール細胞について免疫不全マウスに移植し、腫瘍の進展におけるフィラグリンの効果を検討した。その結果、現在一部の細胞についてフィラグリンのノックダウンによる腫瘍増殖抑制効果が認められている。また、バリア機能に重要と考えられる腫瘍からのフィラグリンの分泌について検討するために卵巣明細胞癌細胞ゼノグラフトマウスについて血漿を調製し、血液中へのフィラグリンの放出を市販のELISAキットを用いて検討したが、検出されなかった。また虚血環境におけるICAM-1の発現をノックダウンさせるとプロフィラグリンに加えてフィラグリンオリゴマーと考えられる分子が検出されたことから当初の期待通りICAM-1がフィラグリンの脱リン酸化に続くプロフィラグリンの分解を抑制することによりアポトーシス抑制に関与していることが支持された。現在更なる詳細なメカニズムの解明に加え、外科切除手術検体を用いてフィラグリンの発現を免疫染色法で検討中である。
|