研究課題/領域番号 |
21K09493
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
中村 暁子 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (70839430)
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研究分担者 |
木村 文則 滋賀医科大学, 医学部, 客員教授 (90322148)
花田 哲郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (30757216)
森宗 愛菜 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (60757219)
北澤 純 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (30823900)
村上 節 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20240666)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / ラクトフェリン |
研究実績の概要 |
我々は正所性子宮内膜における慢性炎症および着床不全を特徴とする慢性子宮内膜炎について、以前より研究を行ってきた。慢性子宮内膜炎に対するラクトフェリンの抗炎症効果を調べるために、子宮内膜間質細胞にウシラクトフェリン(bLf):1 mg/mLを添加して培養すると、炎症性サイトカインIL-1β・TNF-αの発現がmRNAおよびタンパクレベルで抑制された。培養細胞にTNF-αを添加して炎症を惹起すると、TNF-αに誘導されたIL-6 mRNA発現が、bLf:1 mg/mLにより抑制された。子宮内膜間質細胞に対するbLfの抗炎症効果がTLR4を介するものであるとの仮説を立て、培養細胞への抗TLR4抗体添加を行ったが、bLfが抑制したIL-6 mRNA発現の再上昇はみられなかった。Western blottingによる解析で、子宮内膜間質細胞に対するラクトフェリンの抗炎症効果が、細胞内シグナル伝達物質Akt・NFκBを介するものであることを発見した。 子宮内膜症に関しては、手術で摘出した卵巣チョコレート嚢胞から間質細胞を単離し、bLfを添加して培養を行っている。ELISA・RT-PCR・Western blottingでの解析を行うため、細胞培養上清および細胞懸濁液を凍結保存しているが、目標検体数にはまだ達していない。BrdU添加とフローサイトメトリーを用いた細胞周期解析では、ラクトフェリンが間質細胞の細胞増殖を抑制する傾向にあることがわかってきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度にin vitroの実験に目途をつけることができれば、2022年度は子宮内膜症モデルマウスの作成を含めたin vivoの実験へと進めていく予定であったが、良性疾患の手術件数が制限されており、in vitroの実験で目標としていた検体数に達していない。 また、本研究開始前から行っていた、正所性子宮内膜に対するラクトフェリンの抗炎症効果についての研究に関して、その作用機序を調べる目的でWestern blottingを施行していたが、当初の予定よりも時間がかかり、本研究もやや遅れる形となってしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
子宮内膜症間質細胞のbLf添加培養を継続し、目標検体数に達した時点でELISAやRT-PCRでの解析を行う。 また、正所性子宮内膜に対するラクトフェリンの抗炎症効果に着目し、その発症や病状の進行に腹腔内の炎症が深く関わっていると考えられる子宮内膜症に関して、生体内でラクトフェリンが不足している、またはラクトフェリンの効果が減弱している場合に発症・進行しやすいとの仮説を立て、子宮内膜症患者の血清中ラクトフェリン濃度・抗ラクトフェリン抗体濃度をELISAで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度にin vitroの実験における目標検体数に達することができなかったために未施行となっている、ELISA・RT-PCR・Western blottingなどの物品費、およびhuman lactoferrin ELISA kit、human anti-lactoferrin antibody ELISA kit購入のための物品費として、 2021年度に未使用の物品費を2022年度に使用する予定である。
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