研究課題
ヒト子宮体癌組織を用いた解析の結果、子宮体癌組織おいては正常子宮内膜組織と比較して、三量体GタンパクであるGa13が高発現していることが明らかとなった。子宮体癌の発生、進展におけるGa13高発現の役割を解析するために、子宮体癌細胞株を用いた実験を行った。Ga13は低分子量GタンパクRhoの活性化を制御することが知られているが、子宮体癌細胞株において、Ga13-Rhoシグナルの活性化が、転写因子AP-1の活性化を介して細胞増殖を制御していることが明らかとなった。AP-1はJUN、FOS、ATF、MAFファミリーの分子から構成されるヘテロ二量体の転写因子で、細胞外からの刺激に対して直ちに誘導されるImmediate early genesのひとつとして知られているが、AP-1の機能を阻害することにより子宮体癌細胞の増殖能、造腫瘍能が抑制されることが示された。また、Ga13-Rhoシグナル経路はAP-1以外にHippoシグナル経路を制御していることが明らかとなった。Hippoシグナル経路は臓器のサイズを制御するシグナルとして知られているが、子宮体癌細胞の増殖にも関与していることが明らかとなった。Hippoシグナル経路を阻害することにより、子宮体癌の増殖能が抑制されることが明らかとなった。興味深いことに、子宮体癌組織においては、Ga13-Rhoシグナルを負に制御する因子の一つであるARHGAP35に高頻度に遺伝子変異が生じていることが報告されている。ARHGAP35の遺伝子変異体を用いた解析の結果、子宮体癌組織において認めるARHGAP35の遺伝子変異は機能欠失型の遺伝子変異であることが明らかとなり、Ga13-Rhoシグナルの増強に関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通りの実験が遂行できている。Ga13-Rhoシグナルの活性化により制御される転写因子について集中的な解析を行った結果、転写因子AP-1の関与が明らかとなり、その制御機構における新たな知見が得られた。
基礎実験の結果から、子宮体癌細胞においては、Ga13-Rhoシグナルの活性化が転写因子AP-1、Hippoシグナル経路の制御を介して細胞増殖、造腫瘍能を促進していることが明らかとなった。今後は、子宮体癌組織を用いた3D培養モデルを用いて、これらのシグナル経路を抑制した場合の増殖能、造腫瘍能への影響を評価する予定である。また、これらの研究成果について、論文作成および学会発表の準備を行っている。
当該年度に予定していた子宮体癌細胞株を用いた実験を次年度に持ち越したため、物品購入費を次年度に持ち越した
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